Analysis

システム生物学のパイプラインが幹細胞工学に有用な調節ネットワークを明らかにする

Nature Biotechnology 37, 7 doi: 10.1038/s41587-019-0159-2

幹細胞工学では、細胞分化を支配する分子ネットワークおよび生物学的過程を全体論的に理解することが大きな課題となっている。本論文では、その課題に取り組むため、遺伝子発現解析、プロテオーム経路情報科学からすでに得られている知見、および細胞シグナル伝達モデルを組み合わせて、分化細胞の重要な移行状態をコンピューターによって高分解能で描写する手法を紹介する。我々のネットワークモデルは、まばらな遺伝子シグネチャーを、対応するが全く異なる生物学的過程と結び付け、細胞運命の移行を支配する分子機構を明らかにする。この手法は、我々が先に開発したCellNetおよび最近の経路解明用アルゴリズムに基づく。それは、赤血球系譜上の造血細胞の運命指定に関する我々の解析によって実証され、その解析では、血液発生の重要なメディエーターとしてのEGF受容体ファミリータンパク質ErbB4の役割が明らかにされた。我々はその予測を実験によって検証し、経路を変化させてヒト多能性幹細胞からの赤血球成熟を改善した。こうした結果は、統合的なシステムによる展望を利用して細胞工学に有用な新しい調節過程およびノードを明らかにする。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度