Article

胎盤sFLT1のRNAi調節による妊娠高血圧腎症の治療

Nature Biotechnology 36, 12 doi: 10.1038/nbt.4297

妊娠高血圧腎症(子癇前症)は胎盤から誘発される妊娠高血圧であり、母親および胎児の罹患率および死亡率が高い。早期妊娠高血圧腎症の臨床症状は、胎盤に由来する可溶性の血管内皮増殖因子受容体FLT1(sFLT1、別名sVEGFR1)の過剰な血中循環によるものである。今回我々は、主として胎盤でのsFLT1過剰発現の原因となっている3種類のsFLT1 mRNAアイソフォームを、全長FLT1 mRNAのレベルを低下させることなく選択的に抑制するsiRNAを発見した。疎水性修飾を背景とする十分な化学的安定化により、妊娠マウスでは胎盤内に生産的なsiRNAが蓄積し(注入量の最大7%)、循環血中のsFLT1が減少した(最大50%)。ヒヒの妊娠高血圧腎症モデルでは、siRNAの単回投与によって、sFLT1の過剰発現および妊娠高血圧腎症の臨床的徴候が抑制された。今回の結果は、非製剤化siRNAによるRNAiに基づく遺伝子発現の肝外調節を非ヒト霊長類で実証し、早期妊娠高血圧腎症患者の新しい治療パラダイムへの道筋を確立した。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度