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Cas9を介した自殺遺伝子の挿入による腫瘍細胞のゲノム再構成のターゲッティング

Nature Biotechnology 35, 6 doi: 10.1038/nbt.3843

腫瘍細胞のゲノム再構成および変異を特異的に狙うことは、がん治療のまだ到達できない目標である。今回我々は、Cas9に基づくゲノム編集を使って、単純ヘルペスウイルス1型のチミジンキナーゼ(HSV1-tk)というプロドラッグ変換酵素をコードする遺伝子を、ゲノム再構成で生じた固有の配列を有するがん細胞のゲノムへ導入した。具体的には、ヒト前立腺がん細胞または肝細胞がん細胞の融合遺伝子TMEM135–CCDC67およびMAN2A1–FERのブレークポイントを、in vitroおよびマウス異種移植片で標的化した。我々は、ニッカーゼCas9D10Aおよびそのブレークポイント配列を標的とするガイドRNAを送達するアデノウイルス、ならびにそのブレークポイントの周辺と相同的な配列に挟まれたEGFP-HSV1-tk構築物を送達する別のアデノウイルスを設計した。この両方のウイルスを感染させた結果、ブレークポイント依存的なEGFP-tk発現、およびガンシクロビルを介したアポトーシスが生じた。マウス異種移植片をアデノウイルスおよびガンシクロビルで処理すると、全てのマウスで腫瘍負荷の緩和が認められ、試験期間中に死んだ個体はなかった。従って、Cas9を介した自殺遺伝子の挿入は、有効な遺伝子型特異的がん治療法となる可能性がある。

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