Computational Biology

ヒト代謝ネットワークの腫瘍誘発性遺伝子発現変化の多様性

Nature Biotechnology 31, 6 doi: 10.1038/nbt.2530

細胞代謝の再プログラム化は悪性形質転換の新しい特徴である。しかし、腫瘍の代謝遺伝子の発現が正常組織とどのように異なるのかは明らかにされておらず、さまざまな種類の腫瘍が類似した代謝変化を示すのかどうかもわかっていない。本論文ではヒトの腫瘍22種類の代謝遺伝子の発現パターンを比較した。総合的に見て、腫瘍の代謝遺伝子発現プログラムは対応する正常組織のものと類似していた。一部の代謝経路の発現変化(ヌクレオチド生合成および解糖の上方制御など)はさまざまな腫瘍に高頻度で観察されたが、ほかの経路の発現変化(酸化的リン酸化など)は極めて多様であった。今回の分析では、一部の代謝遺伝子(イソクエン酸デヒドロゲナーゼおよびフマル酸ヒドラターゼなど)の発現変化が腫瘍内に頻発する変異の影響を強化または模倣する可能性も示唆された。個々の生化学反応のレベルでは、数百に上る代謝アイソザイムが大幅で腫瘍特異的な発現変化を示した。そうしたアイソザイムはがん治療の潜在的な標的である。

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