Perspective

ヒト奇形腫に学んで安全な幹細胞治療の開発方針を得る

Nature Biotechnology 30, 9 doi: 10.1038/nbt.2329

多能性幹細胞治療の臨床応用では、奇形腫などの新生物を形成する危険性が安全上の重大な障害となっている。その意味で、腫瘍形成リスクの前臨床評価は、科学および規制の面で大きな課題をもたらす。それはとりわけ、動物の異種移植モデルがヒト細胞の長期的な腫瘍形成能を適切には反映しないと考えられるためである。ヒトの自然発生的な奇形腫および関連腫瘍の生物学的理解を深めることは、胚性幹細胞や人工多能性幹細胞を用いる治療法の潜在的な危険性を評価して最小化する研究の方向性を定めるうえで有用である。本論文では、ヒト多能性幹細胞から実験的に得た奇形腫の特徴をまとめ、それがマウスおよびヒトの生命の初期に生ずる自然発生的な良性の奇形腫ときわめて類似していることを明らかにする。こうした自然発生的な奇形腫の自然経過および病理は、幹細胞治療試験の前臨床安全性評価および患者の経過観察に関する重要な手がかりを与える。

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