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髄鞘形成能が高く移動可能で効率的に生着するヒトオリゴデンドロサイト前駆細胞の集団をCD140aが明らかにする

Nature Biotechnology 29, 10 doi: 10.1038/nbt.1972

髄鞘疾患を持つ実験動物は、障害を受けた脳または脊髄にオリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)を移植することによって治療することができる。OPCは、mAb A2B5が認識するガングリオシドの発現を指標に分離されてきたが、このマーカーは限られた系統のアストロサイトおよび幼若ニューロンをも認識する。髄鞘形成能を持つOPCを分離する効率的な方法を確立するため、我々は、OPCで差次的に発現している血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)αのエピトープCD140aを用いてヒト胎児前脳細胞を分類した。CD140a+細胞は、もともと成熟ニューロンの表現型マーカーもアストロサイトの表現型マーカーも発現せず有糸分裂を行う両能性の前駆細胞として分離されたが、in vitroでオリゴデンドロサイトまたはアストロサイトのいずれかに分化させることができた。移植されたCD140a+細胞は移動性が高く、A2B5+細胞と比較すると、髄鞘形成不全シバラー(shiverer)マウスの脳で急速かつ効率的に強力な髄鞘形成を行った。CD140a+細胞は、マイクロアレイ解析により、オリゴデンドログリアマーカーCD9を過剰発現していることがわかり、CD9+/CD140a+細胞は、髄鞘形成能を持つ前駆細胞の比率がさらに高い集団を構成する可能性が示唆された。

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