Review

武装する抗体:免疫複合体の前途および課題

Nature Biotechnology 23, 9 doi: 10.1038/nbt1141

免疫複合体はモノクローナル抗体(mAb)を放射性同位体および毒物のようなきわめて毒性の高い薬物(単体で全身投与しても効果がない)と結合させたものであり、がん治療の重要な要素となりつつある。mAbの優れた標的特異性と毒性作用分子の高い殺腫瘍力とを組み合わせることで、免疫複合体では標的組織と正常組織とを高感度に識別することが可能であり、従来の化学療法薬の多くと比較して毒性による副作用が減少した。現在、放射性免疫複合体ではイブリツモマブ・ティウキセタン(ゼバリン)およびトシツモマブ131I(ベキサール)の2種類が、また薬物複合体ではゲムツズマブ・オゾガミシン(マイロターグ)が販売されている。次世代の免疫複合体ではタンパク質工学の進歩によってmAbの標的指向化、クリアランスおよび薬物動態がさらに制御されるようになり、放射性同位体および強力な抗がん薬の腫瘍への送達が大きく改善されると考えられる。事前標的化(pretargeting)法は抗体による限局化および毒物の送達または生成というふたつの機能を2段階に分けるものであり、やはり腫瘍標的化および治療効果の優良性が期待されている。免疫複合体の最適化には、mAbの腫瘍内への取り込まれにくさ、正常組織の複合体への曝露、さらには薬物の効力およびmAb担体からの条件的放出に関する問題など課題がいくつか残されてはいる。しかし、前臨床モデルではきわめて有望な結果が得られており、この薬効領域の臨床開発を目指す動きは今後も続くと考えられる。

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