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シロイヌナズナのABC輸送体の過剰発現によって遺伝子組換え植物にカナマイシン耐性を付与する

Nature Biotechnology 23, 9 doi: 10.1038/nbt1134

遺伝子組換え植物にカナマイシン耐性を付与することができるネオマイシンリン酸転移酵素II型遺伝子のような細菌由来の選択マーカーは、植物工学できわめて有用なツールである。しかし、現在用いられている抗生物質耐性遺伝子はすべて細菌由来であるため、逆に遺伝子組換え植物から微生物へ遺伝子が水平伝播することによって細菌が抗生物質耐性を獲得する可能性が懸念されてきた。本論文では、シロイヌナズナArabidopsis thalianaのATP結合カセット(ABC)輸送体をコードする遺伝子Atwbc19の性質を検討し、遺伝子組換え植物に抗生物質耐性を付与した。この耐性機構は新たなものであり、耐性の強さは細菌の抗生物質耐性遺伝子をCaMV 35Sプロモーターで発現させた遺伝子組換えタバコに匹敵するものであった。ABC輸送体は植物由来であることから、耐性遺伝子の水平伝播の危険性に鑑み、Atwbc19 が現在の細菌由来のマーカー遺伝子に代わって遺伝子組換え植物で選択マーカーとして実用化される可能性がある。

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