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有用細菌の設計図解読

Nature Biotechnology 23, 7 doi: 10.1038/nbt1110

植物病原体の防除に役立つと期待されている有用細菌の遺伝情報が解読された。Ian Paulsenたちは、天然の土壌細菌である蛍光菌Pseudomonas fluorescensPf-5のゲノムを完全に解読した。このゲノム塩基配列の解読が、この菌がつくる多彩な抗菌物質のいくつかについて、手がかりを与えてくれるだろう。この菌が生物学的防除に有用とされるのは、これらの抗菌物質のおかげである。  蛍光菌Pseudomonas fluorescensPf-5はシュードモナスの一種で、環境内での競争に勝つために、微生物の成長を抑えるさまざまな天然化合物を生産する。抗菌物質をつくるこの菌の能力を活用しようと、農業分野では、病原細菌や病原性菌類の成長を阻害するための散布薬としてP. fluorescensが利用されている。  7.1MbのP. fluorescensゲノムから、この細菌の天然の武器庫について新たな知見が得られた。この菌の武器には、抗真菌作用をもつ二次代謝産物の生産にかかわる遺伝子、宿主植物に耐性を誘導するしくみや特定の病原体に対抗する戦略機構にかかわる遺伝子が含まれている。特にPaulsenたちは、生物学的防除機構に一役買っている可能性のある、界面活性剤や複雑なペプチドなどの新規化合物の遺伝子について報告している。今回のゲノム塩基配列の分析で得られた新しい情報は、この蛍光菌の農業利用を進めるのに役立つだろう。

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