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ヒト胚性幹細胞に由来する神経前駆細胞のラット脳中での移動および分化

Nature Biotechnology 23, 5 doi: 10.1038/nbt1088

ヒト胚性幹(hES)細胞は、再生医療で無限の細胞供給源となるものである。最近、hES 細胞をin vitroで神経系細胞に分化させる方法論が開発された。しかし、hES 細胞由来の細胞と成人の脳内環境との相互作用は未だ検討されていない。本論文では、hES細胞由来の神経前駆細胞がラット若年成体の正常脳および損傷脳で神経細胞、星状細胞、および乏突起神経膠細胞に分化し、白質路を広範囲に移動したことを発表する。hES細胞に由来する細胞の分化および移動方式は領域特異的であった。hES細胞由来の神経前駆細胞は、絶えず神経発生が行われている脳室下帯にある内在性の神経前駆細胞プールに組み込まれた。成人の神経幹細胞と同じく、hES細胞由来の神経前駆細胞は、吻側細胞移動路を嗅球まで移動し、そこで神経形成に寄与した。細胞融合の形跡は認められず、hES細胞由来の細胞は脳室下帯で宿主の指令に適切に応答する能力をもっていることが示唆された。

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