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筋ジストロフィー治療の速達便

Nature Biotechnology 23, 3 doi: 10.1038/nbt1073

筋ジストロフィーや心筋症のような疾患に対する遺伝子療法の開発では、治療用遺伝子を血管から効率的に送達することが大きな課題となっている。Xiaoらは、アデノ随伴ウイルス(AAV)を血清型間で包括的に比較し、全身投与で筋組織および心臓組織に遺伝子を導入するためのベクターを検討したなかで、AAV8が最も効率的であることを見出した。緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現するAAV8を新生マウスの腹腔内または静脈内に注射すると、骨格筋および心筋でGFPが強く発現し、マウスの成長後までその状態が続いた。同じような組織特異的な結果は成体マウスでもみられたが、筋以外の組織でのGFP発現はほとんど検出されなかった。AAV8では、効果を得るために血管内皮増殖因子のような血管透過性亢進剤を添加する必要がない。Xiaoらはこのことを示すため、筋ジストロフィー表現型のハムスターにAAV8を用い、δ-サルコグリカンを送達して回復させた。δ-サルコグリカンは、不足するとハムスターが筋ジストロフィーを発症する物質である。

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