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ヒト胚性幹細胞から運動ニューロンへの特異化

Nature Biotechnology 23, 2 doi: 10.1038/nbt1063

哺乳動物の幹細胞からどのように特定のニューロン・サブタイプが生ずるかは未だ解明されていない。本論文では、ヒト胚性幹細胞から初期神経外胚葉細胞が生じ、これがロゼットを形成してPax6を発現し、Sox1を発現していなかったこと、さらに後期神経外胚葉細胞が生じ、これが神経管様構造を形成してPax6およびSox1をともに発現していたことを示す。初期の神経外胚葉細胞はレチノイン酸によって効果的に後方化され、ソニック・ヘッジホッグ存在下で脊髄の運動ニューロンに分化したが、後期ではいずれの変化も生じなかった。 in vitroで生じた運動ニューロンは、HB9、HoxC8、コリンアセチルトランスフェラーゼ、および小胞性アセチルコリン輸送体を発現しており、筋管でアセチルコリン受容体のクラスター形成を誘導し、電気生理学的活性を有していた。今回の発見は、運動ニューロンへの特異化には神経外胚葉誘導中にレチノイン酸が作用する必要のあることを示しており、発生段階初期にあっても幹細胞は領域特異的な投射ニューロンを生ずる能力が制限されていることを示唆している。

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