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ヒト胚性幹細胞から内胚葉への効率的な分化

Nature Biotechnology 23, 12 doi: 10.1038/nbt1163

ヒト胚性幹細胞(hES)は各種臓器の細胞型に分化する能力を有しており、治療への応用に期待が高まっている。特に注目されているのは、膵臓など内胚葉(definitive endoderm)に由来する臓器である。我々はhES細胞の内胚葉系列への誘導に着目した。それは、成熟した内胚葉由来器官への効率的な分化にはこのステップが不可欠であるためである。アクチビンA存在下で血清濃度を下げてhES細胞を分化させたところ、内胚葉細胞を最高80%含有する培養細胞が得られた。この細胞集団は、細胞表面受容体CXCR4によって均質に近い状態までさらに濃縮された。培養hES細胞の分化時の内胚葉形成プロセスでは、脊椎動物の原腸形成を思わせる見かけ上の上皮−間葉転換および動的な遺伝子発現プロファイルがみられる。今回の知見により、hES細胞は治療目的の利用、およびin vitroの発達モデルとしての使用が促進されると考えられる。

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