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がん細胞内のチロシンリン酸化の免疫親和性プロファイリング

Nature Biotechnology 23, 1 doi: 10.1038/nbt1046

チロシンキナーゼはヒトのがんで大きな役割を担っているが、細胞の増殖および生存を司る発がんシグナル伝達経路の同定は困難である。その理由には、経路の複雑さおよび細胞内のチロシンリン酸化レベルの低さなどが挙げられる。包括的なリン酸化プロテオミクス法では、リン酸化チロシンを含むペプチドがわずかしか発見されない場合が多い。今回開発した方法では、リン酸化プロテオームのリン酸化チロシン成分が強調され、チロシンリン酸化部位が多数同定される。リン酸化チロシンを含むペプチドは、プロテアーゼ処理した細胞タンパク質抽出物からリン酸化チロシン特異的抗体を用いて直接単離し、タンデム質量分析法で同定する。この方法は、がん細胞系列をはじめとする複数の細胞系に応用したところ、活性型タンパク質キナーゼおよびそのリン酸化基質の同定に利用可能であり、活性化されるシグナル伝達ネットワークに関する予備知識が不要であることが示された。これは、発がん性かどうかによらず、シグナル伝達ネットワークをプロファイリングする第一歩である。

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