Cover Story: 動きの画像化:哺乳類細胞で脂質輸送を可視化する
Nature 646, 8084 (2025年10月9日)
細胞は細胞膜の形成からエネルギー貯蔵までさまざまな目的で脂質分子を使うが、そうした脂質分子は生体組織内で正確な位置を追跡するのが困難なため、研究が極めて難しい。今週号ではA NadlerとA Honigmannたちが、哺乳類細胞における脂質輸送の画像化手法について報告している。研究チームはまず、蛍光顕微鏡で観察可能な一連の脂質プローブを生成し、それらを時間経過とともに追跡することで、細胞小器官の膜の間の脂質交換の様子を描き出した。そして、並行して質量分析法を用いて、脂質プローブが他の脂質種へと変換される過程を評価した。彼らは、定量的な動力学モデル化を用いることで、細胞小器官間の脂質移動の最大90%が、小胞ではなく個々の脂質輸送タンパク質によって制御されていることを明らかにした。表紙画像は、細胞膜に局在する単一のリン酸脂質種(橙色)、ミトコンドリア(青色)、エンドソーム(紫色)を示している。