リサーチハイライト
都会の鳥は長く鳴く
人工光によって明るく照らされた都市環境では、鳥が朝に鳴き始めるのが、暗い場所に比べると平均で18分早くなることが分かった。 Credit: Tanes Ngamsom/Getty
国際的な市民科学プロジェクトのデータから、明るく照らされた都市部に生息する鳥は、最も暗い環境に生息する鳥に比べて、1日平均50分も長く鳴いていることが明らかになった。都会の鳥が朝に鳴き始める時刻は平均18分早く、夕方に鳴き終える時刻は平均32分遅かった。
都市部に多い過剰な照明は光害と呼ばれる。光害が鳥の活動に及ぼす影響を調査するため、南イリノイ大学(米国カーボンデール)のBrent Peaseとオクラホマ州立大学(米国スティルウォーター)のNeil Gilbertは、世界約8000カ所のボランティアによって管理されている音響センサーのデータを解析した。BirdWeatherというプロジェクトによって提供されたこの装置は、約600種の鳥の鳴き声を検出した。
大きな目を持つ種は特に光害の影響を受けやすく、最も明るい場所では最も暗い場所に比べて鳴き始めるのが35分早く、鳴き終わるのが56分遅かった。
鳥たちが余分に鳴いている時間によって睡眠や休息が削られるかもしれないが、明るい時間が長くなることは鳥にとって必ずしも悪いことばかりではない。活動時間の長さは、採餌時間の増加、繁殖や子育ての成功率の上昇といった利点につながるからである。
Science 389, 818–821 (2025).
鋭い歯を持つ先史時代の捕食者
Credit: José Brusco (CC-BY-4.0)
約7000万年前の今日のアルゼンチン南部に当たる地域では、巨大なワニのような頂点捕食者が、おそらく中型の恐竜を含む大きな獲物を狩っていた。
現生のクロコダイル、アリゲーター、カイマンに似た爬虫類は、少なくとも2億3000万年前から存在していた。しかし、これらの動物の中には、どのような姿をしていたのか、その全貌が明らかになっていないものもいる。例えば、白亜紀(1億4500万〜6600万年前)の終わりに生息していた大型で幅の広い口吻を持つペイロサウルス科の捕食者については、研究者は顎の骨の破片数点しか手にしていなかった。
このほどベルナルディーノ・リバダビア・アルゼンチン自然科学博物館(ブエノスアイレス)のFernando Novasらは、パタゴニア地方での発掘調査で、ワニのような大型動物の完全な頭骨、脊椎、骨盤の化石を発見した。その保存状態は、同時代のペイロサウルス科の動物の化石としては最高レベルであった。
Kostensuchus atrox(写真、3D復元模型)と命名されたこの新種は、頭骨のサイズから、体長は3.5 m以上、体重も250 kgあった可能性がある。そのサイズと強靭な顎、そして、のこぎり状の歯は、この種が大型動物を狩っていたことを示唆しており、当時この地域で2番目に大きな捕食者であったと考えられる。
PLoS ONE 20, e0328561 (2025).
「超放射ニュートリノレーザー」の探究
Credit: NASA/JPL-Caltech/Science Photo Library
ニュートリノは電気的に中性な素粒子である。このほど物理学者が、光の代わりにニュートリノの強力なバーストを放出できるレーザーを提案した。このレーザーが実現すれば、加速器や原子炉のような高価な装置を使うことなく、ニュートリノの「卓上」研究が可能になるかもしれない。
通常のレーザーでは、原子はより高いエネルギー状態へと励起され、刺激によって、同調した光子(光の粒子)を放出する。今回提案された「超放射(superradiant)」レーザーでも、原子が同期した光子を放出する。けれども通常のレーザーとは異なり、超放射レーザーは光子の「ボソン的」な性質、すなわち複数の光子が同一の量子状態を共有できる性質に依存しない。その結果、ボソンではないニュートリノを放出する超放射レーザーを設計することができるはずだと考えられる。
テキサス大学アーリントン校(米国)のBenjamin Jonesとマサチューセッツ工科大学(MIT、米国ケンブリッジ)のJoseph Formaggioは、真空中に浮遊させて極低温に冷却した約100万個の放射性ルビジウム原子の集団に何が起こるかを計算した。その結果、ニュートリノを放出する、ルビジウム原子核の放射性崩壊が通常の10万倍の速さで起こり、レーザーのようなニュートリノのバーストが発生することが見いだされた。
Phys. Rev. Lett. 135, 111801 (2025).
平均寿命が100歳を超える日はしばらく来ない
Credit: Brent Lewin/Bloomberg/Getty
ヒトの寿命は昔に比べてどんどん長くなっているが、平均寿命が延びるペースは20世紀初頭から急激に落ちていることが明らかになった。
マックス・プランク人口統計研究所(ドイツ・ロストック)のJosé Andradeらは、複数の死亡率予測手法を用いて、収入の高い23カ国で1939年から2000年までの間に生まれた人々の平均余命を予測した。そしてその結果を、1900年から1938年までに生まれた世代の平均余命と比較した。
得られた結果は、1939年以降に生まれた世代では、平均余命が延びるペースが、1年当たり約6カ月から約3カ月へと急激に低下することを示唆していた。これは主に、子どもの死亡率の低下が停滞するためで、こうした死亡率低下の半分以上が5歳未満の子どもの生存率と関連していた。
この現象は、世代や地域を超えて広がっている。そのため、平均余命が従来と同じペースで延び続けた場合、平均寿命は近い将来100歳に到達すると予測されていたが、著者らの推定では、現在生存しているどの世代の平均余命も100歳に到達する可能性はないという。
Proc. Natl Acad. Sci. USA 122, e2519179122 (2025).
歌で敵味方を区別するネズミ
Credit: Johann van Heerden/Moment/Getty
アフリカの砂漠に生息する野生のネズミは、あまり遠くまで届かない「歌」を歌うことで、隣人とよそ者を区別していることが分かった。
アフリカ南部の固有種であるヨスジクサマウス(Rhabdomys pumilio、写真)は、最大30匹の群れで集団生活をしていて、夜間は巣に集まるが、昼間は単独で採餌を行っている。サン・テティエンヌ・ジャン・モネ大学(フランス)のLéo Perrierらは、このネズミの4つの群れを追跡し、その巣や縄張りの中心部、あるいは他の群れのネズミと出合うことがある境界領域に、23台の録音機を設置した。
研究者らは12日間にわたって、何千もの超音波の鳴き声を録音した。ネズミたちの鳴き声が届く距離は2 m未満で、高過ぎてヒトには聞こえない。この結果、ネズミたちは縄張りの全域で「歌い」、境界では鳴き声を変えていて、それぞれの群れの鳴き声には、独自の特徴があることが分かった。
録音再生実験により、このネズミは近くの群れのネズミとよそ者のネズミを識別できることが確認された。彼らはよそ者の声を聞くと巣に逃げ込んだが、仲間の声を聞いても巣には逃げ込まなかった。この超音波のおしゃべりは、ネズミたちが縄張りを越えてコミュニケーションを取り、隣人やよそ者とやりとりするのに役立っていると、著者らは述べている。
Curr. Biol. https://doi.org/p5p9 (2025).
自ら気道内に入って挿管するソフトロボット
Credit: Getty
くねくねとヒトの気道内に入ってゆくホラー映画のようなロボットが報告された。このロボットは、重症患者の気道確保を速やかに成功させて救命に役立つ可能性がある。
十分な訓練を受けた救急医療従事者にとっても、迅速な気管挿管は難しいことが多く、そうなると患者の命に関わってくる。この問題を解決するため、ヴァイン・メディカル社(米国カリフォルニア州サンタバーバラ)のDavid Haggertyらは、軟らかいプラスチック製のチューブを自律的に喉から気管へと誘導するロボットを設計した。
救急医療従事者らは、わずか5分間の訓練の後、このロボットを使って従来のビデオガイド下での挿管よりも平均24秒早く遺体に挿管することができた。また、初回の試みにおける挿管の成功率は、ロボットでは10回中9回であったのに対し、ビデオガイド下の挿管では3回中2回未満であった。
これらの結果は、このロボットが救命のための気管挿管をより正確で信頼できるものにし、あまり訓練を受けていない多くの医療従事者にも利用できるようにするのに役立つことを示している。世界人口の半数が基本的な医療サービスを受けられていない現状を考えると、このロボットの有用性は大きい。
Sci. Transl. Med. 17, eads7681 (2025).
糖尿病治療薬で染色体のアンチエイジング
Credit: Sciepro/Science Photo Library/Getty
2型糖尿病患者に処方される薬剤に、血糖値を下げるだけでなく細胞の老化を遅らせる効果もあることが、臨床試験で明らかになった。
ヘナグリフロジンという薬は、体内の過剰なブドウ糖を尿中へ排出するのを助け、体重の減少も促す。
南昌大学附属第一病院(中国)のJie Zhangらは、142人の2型糖尿病患者を対象に、ヘナグリフロジンの抗老化効果を検証した。試験参加者のうち69人にはヘナグリフロジンが毎日投与され、73人にはプラセボが投与された。研究チームは、参加者の白血球中のテロメア(イメージ画像中の水色の部分)の長さを測定した。テロメアは染色体の末端にあってこれを保護するDNA塩基配列で、加齢とともに短くなる。
投与を26週間続けた後、再びテロメアの長さを測定してベースライン時と比較すると、プラセボ投与群の約66%でテロメアが有意に長くなっていたのに対し、ヘナグリフロジン投与群では約90%が有意に長くなっていた。
研究者らは、試験期間中の食事や運動などの生活習慣が両群の結果に寄与しているが、治療群でより大きな反応が見られたのは、ヘナグリフロジンの付加的な効果を示していると主張する。
Cell Rep. Med. https://doi.org/p4ts (2025).
太陽系外からの訪問者を激写
Credit: Image: NASA, ESA, David Jewitt (UCLA); Image Processing: Joseph DePasquale (STScI)
太陽系の外からやって来た珍しい恒星間彗星3I/ATLAS(写真中央)は、天文学者によって発見される数カ月前からガスを噴出していた可能性がある。
2025年7月1日に3I/ATLASが発見されると、世界中の望遠鏡がこの彗星に向けられた。太陽系を駆け抜ける恒星間天体の姿が捉えられたのはまだ3例目であるため、科学者らは少しでも多くの情報を収集したいと考えている。
ミシガン州立大学(米国イーストランシング)のAdina Feinsteinらは、トランジット法で系外惑星を探すために広い範囲の空を観測しているNASAの探索衛星TESSのアーカイブデータに目を通した。その結果、TESSはたまたま2025年5月7日から6月3日までの期間に3I/ATLASの画像を撮影していることが分かり、この彗星の最も早期の観測例となった。
3I/ATLASは当時はまだ木星軌道の外側にあったにもかかわらず、予想以上に明るくなっていた。この観測結果は、3I/ATLASが他の多くの彗星とは異なり、太陽から遠く離れた所にある時からかすかに活動してガスや塵を放出していた可能性を示唆している。彗星の明るさが増したのは、太陽の熱が氷の表面から揮発性化合物を蒸発させたからだと考えられる。
Astrophys. J. 991, L2 (2025).
翻訳:三枝小夜子
Nature ダイジェスト Vol. 22 No. 12
DOI: 10.1038/ndigest.2025.251202
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