2025年12月号Volume 22 Number 12
世界の高等教育機関の現在地
世界の大学には今や2億6400万人以上の学生が在籍している。この「学びの国」の人口動態、地政学、カリキュラムの変化を通じて、世界の高等教育と科学基盤の現在地を描き出す。
Editorial
Research Highlights
リサーチハイライト
「都会の鳥は長く鳴く」「鋭い歯を持つ先史時代の捕食者」「『超放射ニュートリノレーザー』の探究」「平均寿命が100歳を超える日はしばらく来ない」、他。
News in Focus
度重なる熱波への曝露は老化を促進し得る
長期追跡研究で、熱波にさらされる回数が多い人ほど老化が加速し、その影響の大きさは、日常的な喫煙や飲酒に匹敵することが示唆された。
研究助成の採択判断にAIアルゴリズムを介入させることの是非
研究者らは、助成金申請書を審査する人工知能(AI)ツールに対して懐疑的だ。
AIがフラグを立てた何百もの怪しげな学術誌
不適切な出版実務の兆候を自動検知するシステムは、問題のある学術誌の排除に役立つ可能性がある。
ビール好きは風味の好みで二派に分かれる
ビール党は、風味化合物の嗜好によって「強い風味好き」と「穏やかな風味好き」の二派に大別されることが明らかになった。
有毒な黄色の色素を生成する深海の蠕虫
マリアナイトエラゴカイという蠕虫が、動物としては初めて、芸術家が長年にわたり使用してきた黄色の色素である雄黄を作り出すことが確認された。
マンモスの歯や骨から発見された細菌群集
塩基配列解読技術により、110万年前のトロゴンテリーゾウの歯の試料から、最古の宿主関連微生物DNAが見いだされた。
ノーベル化学賞は「スーパースポンジ」材料の開発に
北川進、Richard Robson、Omar Yaghiは、金属有機構造体(MOF)と呼ばれる画期的な超多孔性材料の開発において先駆的な研究を行った。
免疫系の制御機構を解明した科学者らにノーベル生理学・医学賞
Mary Brunkow、Fred Ramsdell、坂口志文は、制御性T細胞と呼ばれる、自己免疫疾患から体を守る細胞を発見した。
巨視的量子トンネル効果の実験にノーベル物理学賞
John Clarke、Michel Devoret、John Martinisは、量子トンネル効果が巨視的なスケールでも起こることを発見した。
Features
世界の高等教育の現状
世界ではいまだかつてないほど多くの学生が国外の高等教育機関で学んでいるが、行き先の国は変わりつつある。
トランプ政権による助成金打ち切りと闘う科学者たち
訴訟を起こしたり、研究助成金の打ち切りを追跡したり、市民に注意を促したりすることで、研究者らは政府の攻撃から科学を守ろうとしている。
Japanese Author
Free access
枠を外して考える力:オルガノイド研究の最前線を走る若き旗手
オルガノイドは臓器を模倣した微小な構造物。誰も考え付かなかった方法で、複数種類の細胞からなるヒト肝臓オルガノイドを作り出し、世界をあっと言わせたのは12年前のこと。武部貴則准教授・教授が医学部を卒業してすぐの時だ。その後も、オルガノイド研究分野を発展させるだけでなく、自由な発想で活躍の幅も広げてきた。
News & Views
リチウム欠乏がアルツハイマー病の一因か?
脳内のリチウムは認知機能の低下を防ぐことが判明している。失われたリチウムの補充は、アルツハイマー病に対する新たなアプローチとなり得る。
火星探査車が有機物と関連がある鉱物を観察
火星を探査中の探査車「パーサビアランス」は、有機物と関連がある特異な鉱物を観察し、古代の火星の地球化学に関して調査すべき問題を提起した。
熱波が「カーボンメジャー」による排出に帰属された
主要な化石燃料・セメント生産者からの二酸化炭素排出が、特定の熱波と関連付けられることが体系的に示された。3人の科学者が、今回の研究の方法論と、この結果が気候責任訴訟に及ぼす潜在的な影響について考察する。
エストロゲンは腎臓損傷を防ぐ
男性や閉経後の女性は、閉経前の女性よりも急性腎障害を起こしやすい。その理由は、フェロトーシスに対する防御機能の差異から説明できる。
Advances
苦味の真相
あるキノコの苦味を詳しく分析したところ、非常に強力な成分が明らかになった。
水銀汚染を生物で浄化
遺伝子改変ゼブラフィッシュがメチル水銀を元素状水銀に変える。
Where I Work
Amy MacLeod
Amy MacLeodは、ライプチヒ大学(ドイツ)の保全生物学者。
Advertisement