中間質量ブラックホールの証拠をω星団で発見
中間質量ブラックホールは、それ自体がエキゾチックな天体であるブラックホールの中でも、最も未解明なものの1つだ1。中間質量ブラックホールは、太陽の100倍から10万倍までの質量を持つブラックホールで、銀河の中心で成長する超大質量ブラックホールの不可欠な構成要素になる。重力波で検出されたもののような2、ブラックホール対の合体によって、特に、星の密度の高い環境では、中間質量ブラックホールが生じる可能性がある、という証拠も増えている3。しかし、中間質量ブラックホールの候補は少数見つかっているものの、ブラックホール質量の大きな空白領域は残っている4。マックス・プランク天文学研究所(ドイツ・ハイデルベルク)のMaximilian Häberleらは、銀河系(天の川銀河)の球状星団「ω(オメガ)星団」の中に異常に速く運動する星を発見したことをNature 2024年7月11日号285ページで報告し5、中間質量ブラックホールがω星団の中心に潜んでいるという証拠を示した。
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翻訳:新庄直樹
Nature ダイジェスト Vol. 21 No. 10
DOI: 10.1038/ndigest.2024.241045
原文
Speedy stars blow the cover of hidden black hole- Nature (2024-07-11) | DOI: 10.1038/d41586-024-02135-9
- Daryl Haggard & Adrienne Cool
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Daryl Haggardは、マギル大学(カナダ・モントリオール)に所属
Adrienne Coolは、サンフランシスコ州立大学 (米国カリフォルニア州)に所属
参考文献
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