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染色体外DNAはがん化の前から出現している
染色体外DNAは染色体から離れて存在する環状DNAで、がん化を促進する遺伝子(がん遺伝子)を持ち、がんの増殖を助けている可能性がある1。染色体外DNAおよび関連タンパク質との複合体(クロマチンと呼ばれる)の構造はその転写効率を高め、また、このDNAの継承パターンの結果として1つの細胞内に多くのコピーが含まれるようになる。そのため、がん遺伝子が急速に増幅され、腫瘍の進化が促進されることになる2,3。この染色体外DNAはヒトの多くの種類のがん組織で観察されているが、がん化する前段階の組織には存在しないと考えられていた。今回、カリフォルニア大学サンディエゴ校(米国)のJens Luebeckら4は、がん化する前段階の食道組織から染色体外DNAを検出し、このDNAが非がん組織のがん化を促進していることを示す結果を、Nature 2023年4月27日号の798ページで報告した。
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翻訳:藤山与一
Nature ダイジェスト Vol. 20 No. 7
DOI: 10.1038/ndigest.2023.230749
原文
Extrachromosomal DNA appears before cancer- Nature (2023-04-27) | DOI: 10.1038/d41586-023-00982-6
- David H. Wang
- テキサス大学サウスウェスタン医療センター および退役軍人省北テキサス・ヘルスケアシステム (いずれも米国テキサス州ダラス)に所属
参考文献
- Turner, K. M. et al. Nature 543, 122–125 (2017).
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