Editorial

ウィズコロナは続く:各国は適応の仕方を決めねばならない

Nature ダイジェスト Vol. 19 No. 4 | doi : 10.1038/ndigest.2022.220405

原文:Nature (2022-01-10) | doi: 10.1038/d41586-022-00057-y | COVID is here to stay: countries must decide how to adapt

次々に新たな課題を投げ掛けてくる新型コロナウイルス感染症(COVID-19)。この感染症との付き合いはこれからも続く。これは、オミクロン変異株が私たちに突き付けた現実なのだ。

COVID-19のパンデミックは3年目に入った。私たちはSARS-CoV-2の影響を最小限に抑えて暮らすための術を見つける必要がある。 | 拡大する

Rodrigo Paiva/Getty

SARS-CoV-2パンデミック(世界的大流行)は2021年で過去のものになると期待した人にとっては、このウイルスが猛威を振るい続けることをオミクロン変異株によって思い知らされるという厳しい展開になった。2022年は、世界中でパンデミック前の「普通の」生活に戻る計画を立てるのではなく、ウィズコロナが続くという事実を受け入れねばならない1年になるのだ。

世界各国は、COVID-19と共存する方法を決めねばならない。COVID-19と共存するというのは、COVID-19を無視することではない。ウイルス対策の財政的社会的コスト(例えば、マスク着用義務や営業の一時停止)をウイルス感染による死亡、後遺症、混乱に見合ったものにすることをそれぞれの地域で考えねばならないのだ。その具体的なやり方には地域差があり、時期によっても異なる対応が必要だ。つまり、新しい治療法やワクチンが利用できるようになっているか、新たなウイルス変異株が出現しているかといった事情に左右されるのだ。

ワクチンと過去の感染によって集団免疫を獲得するという希望は、ほとんど消えてしまった。

2021年11月にオミクロン株が出現して、「SARS-CoV-2と共存する」という課題に引き続き取り組まねばならないことが浮き彫りになった。その頃、一部の国々では、感染力の強いデルタ株の感染者が既に急増していたが、ワクチンと過去の感染によって、デルタ株に対する防御力、特に重症化に対する防御力が比較的高くなっていた。

それでもウイルスゲノムが変異すれば、ウイルスに対する免疫、特にウイルス感染を阻止する能力が徐々に損なわれていくと予想されていた。しかし、オミクロン株が免疫を獲得した者に与えた打撃は、予想以上に素早く、深刻だった。今や、SARS-CoV-2の再感染が増えており、最も広く使われているCOVID-19ワクチンのいくつかは、オミクロン株に対する効果が既存株に比べて低いことが明らかになっている。現在、初期の変異株に対して開発された既存のワクチンを追加接種して、感染に対する防御力をかなりのレベルに高める必要が生じている。

ただ、COVID-19に関するニュースは、暗いものばかりではなかった。ワクチンは、特に追加接種した場合に、重症化や死亡に対する防御力がかなりのレベルに達すると考えられている。動物実験によって得られた初期データからは、オミクロン株が、それ以前の変異株とは異なる病態を引き起こし、上気道への感染が多く、肺への感染が少なくなった可能性が示唆されている(Nature 2022年1月13日号177ページおよび今月号15ページ「オミクロン株の構造から急速な感染拡大を説明する」参照)。数カ国のデータからは、オミクロン株の感染者は重症化しにくいことが示唆されているが、その原因がオミクロン株自体にあるのか、既に免疫を有する者が増えたためなのかを明らかにするには、さらなる研究が必要とされる。

世界中でウイルス感染率が急上昇し、一方で多くの国々がまだ十分なワクチンの供給を受けていないため、SARS-CoV-2の懸念される変異株(VOC;variants of concern)は今後も出現し続けるだろう。そして、オミクロン株が示したように、VOCがたどる経過を予測することは、いっそう難しくなる。SARS-CoV-2パンデミックの経過を予測するのにこれまで使われてきたモデルが、ウイルス進化と既存免疫の複雑さのためにますます込み入ったものになるからだ。そのため、モデルを構築する者は、さまざまな事象の影響(ワクチンや感染履歴、時間の経過による免疫の減衰、ワクチンの追加接種、ウイルスの変異株)を考慮する必要があるだけでなく、今後はさらに、新しい抗ウイルス薬の影響も考慮に入れる必要がある。

しかし、はっきりしているのは、ワクチンと過去の感染によってCOVID-19に対する集団免疫を獲得するという希望(当初からその可能性は低かったのだが)が、ほとんど消えてしまったことだ。SARS-CoV-2は、ワクチンによって重症化や死を防ぐことはできても、根絶することはできず、絶滅するどころか、むしろエンデミック(風土病)になるという見解が一般的だ。

また、こうした見解に照らせば、現在ワクチンの供給が不足している国々への配布がさらに急務であることは明らかだ。その必要性は、オミクロン株や他の変異株の流行でも示されてきた通りである。南アフリカ共和国など、これまでワクチン製造の中心地ではなかった国でも、ワクチン製造の強化に向けた取り組みが進められている。世界各国がワクチンを入手しやすくなるためのこうした取り組みやその他の活動は、全ての国々の利益を最大化させる。ワクチン接種率が低い地域では、壊滅的な変異株が出現して大流行する可能性が高く、検査やゲノム監視のレベルが低いと、変異株の感染拡大はさらに進行するのだ。

次の段階

幸いなことに、2022年はSARS-CoV-2パンデミックに対する防御を強化する態勢が整っている。新しいワクチン、例えばタンパク質ベースのワクチンは、現在のmRNAワクチンよりも低コストで、保管条件もそれほど厳しくないため、より広範な地域で利用できるようになるだろう(2022年1月号「タンパク質ワクチンがCOVID-19のパンデミックを収束させるか?」参照)。2021年12月に世界保健機関(WHO)は、ノババックス社(米国メリーランド州ゲイザースバーグ)が製造する待望のタンパク質ワクチンを緊急用として承認した。そして、現在実施中の臨床試験で、特定のコロナウイルス変異株を標的とする新たなワクチンの候補や、注射ではなく吸入や経口で投与可能な新たなワクチンの候補について、有用性が確認されるだろう。また、数種類の経鼻ワクチン候補、例えば、カンサイノ社(中国天津)やアストラゼネカ社(英国ケンブリッジ)が開発したワクチンの臨床試験も行われている。

一方、抗ウイルス薬として最近登場した新薬は、錠剤として製剤化されているので感染初期に投与しやすく、重症化や死亡の割合を低下させることも確認されており、COVID-19の新たな治療法になる。こうした抗ウイルス薬には、メルク社(米国ニュージャージー州ケニルワース)とリッジバック・バイオセラピューティクス社(フロリダ州マイアミ)が製造するモルヌピラビル(molnupiravir)と、ファイザー社(米国ニューヨーク)が製造するパクスロビド(Paxlovid)があり、この数カ月間のうちに数カ国で使用が認可された(2022年2月号「COVID-19の新しい飲み薬:5つの質問」参照)。他の治療薬候補についても、重要な意味を持つ臨床試験のデータが得られる予定だ。

各国政府は、ウイルスに合わせて生活するために、備える必要があるのだ。

こうした新たな展開の全てが、SARS-CoV-2のアウトブレイク(集団発生)の管理に必要な世界全体の能力を増強してくれるだろう。これらの展開は、希望と楽観をもたらすが、同時にたくさんの現実も突き付ける。つまり、SARS-CoV-2は今後も蔓延し、変化し続けるため、各国政府は、科学者の指導と助言に依存し続けなければならない。また、このウイルスの来し方行く末を常に推定、予測できるとは限らない。ウイルスに合わせて生活するために、備える必要があるのだ。

(翻訳:菊川要)

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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