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学術界サバイバル術入門 — 査読をする②:論文原稿を評価する

Nature ダイジェスト Vol. 18 No. 1 | doi : 10.1038/ndigest.2021.210129

投稿された論文原稿を査読するときに、あなたは編集者から何を求められているか、そして、どうやったら効率的に査読できるかについてお話しします。

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FEODORA CHIOSEA/ISTOCK/GETTY

学術界サバイバル術入門
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有能な査読者となるための3回シリーズの2回目にようこそ。前回は、査読依頼に応じる前に考慮すべき重要な問題について話しました。今回は、あなたが投稿論文を評価するに当たり、編集者が何を望んでいるかをお話しします。

編集者が求めるものを理解する

最初に、編集者の立場に立ってみることが大切です。彼らは自分の学術誌と読者に対し責任を持っています。そして、単にその分野に関連していて役に立つだけでなく、読者が興味を持てる論文を掲載したいと考えています。でなければ、彼らの学術誌で発表される論文のダウンロード数や引用数は少なくなってしまうでしょう。ダウンロード数と引用数は、出版社とインデックスによる学術誌の評価で使用される2つの大変重要な測定基準なのです。編集者はこれをよく承知していますから、どの論文を採択して掲載するかを、非常に慎重に決めます。

2番目に、論文を扱う編集者は、投稿された研究に関連するテーマや技術についての専門知識をおそらく持っているでしょうが、そうした知識はしばしば限定的です。それ故、編集者は、その研究を掲載すべきかどうかを決定するのは実際には難しいと感じているかもしれません。加えて、その論文の質を向上させるために、他にどんなことが必要かを決めるのも、彼らには難しいかもしれません。

つまり編集者の立場からすると、査読には、出版する上で「ふるいにかける」「改善する」という2つの重要な利点があるのです。査読は、その分野にとって有用で興味深い高品質な研究が選ばれるのを助け、さらに、論文の正確性、信頼性、および再現性を確実にするためにそれらの研究のロバストネス(堅牢性)を改善する助けもするのです。

ですから、あなたが査読を引き受けた論文の評価に取り組むときには、編集者が望んでいる目標を忘れないようにしましょう。そうすればあなたは、その目標を達成するために、編集者と著者に確実に情報を提供できるでしょう。

あなたが査読者に選ばれたのは、そのテーマと技術についての専門知識を持っているだけではなく、あなたがその学術誌となじみが深いことも理由となっていることでしょう。過去にその学術誌で論文を発表しているあなたなら、論文が採択されるには何をする必要があるかを知っているだろうと編集者が考えている可能性はかなり高いです。学術誌によって、「発表に値する」要件は異なっていることを覚えておいてください。インパクトの低い学術誌に投稿された論文の査読は、インパクトの高い学術誌に投稿されたものとは大いに異なったものになるでしょう。査読する際、そうした見方を常に持っていることが重要です。

初期戦略

編集者が査読者としてあなたに何を期待しているかを理解したところで、正式に論文評価をする前に、初期戦略についてお話ししましょう。前述のように、その学術誌の基準を熟知していることが不可欠です。ですから、最初にするべきことは、その学術誌の「目的と領域」を読んで、著者ガイドラインをおさらいすることです。学術誌が誰に向けて、どんなことを発表したいか、そしてその雑誌が達成したい目標は何かを理解できます。以下のような疑問を自分に投げ掛けることが重要です。

  • 世界中の購読者層向けに研究を発表する国際的な学術誌なのか、それとも地域的な学術誌なのか?
  • フォーカスする範囲の広い学術誌で、発表された研究には広範囲な意味を持つことが示唆されるのか、あるいは特定の研究領域に専門化された雑誌なのか?
  • 主に大学や研究所の研究者向けなのか、それともそれ以外の産業従事者や政策立案者や教育者にも影響を及ぼそうとしているか?
  • 学術誌の主要な興味の対象となるトピックは何か(目的と領域の「領域」にリストされていることが多い)?
  • この学術誌はその分野における衝撃的なブレークスルーに焦点を合わせているか? 例えばNatureScience のように初めて発表される内容にフォーカスしているのか? それとも、進歩はそれよりも小さいものの、発表に値するものを目指しているのか?
  • 実験的または理論的な研究設計のどちらがその学術誌での発表において適切か?

また、いくつかの学術誌では査読者ガイドラインも提供しています1。利用可能であるなら、査読を始める前に読んでおくと、非常に役立つでしょう。

次に、その学術誌に最近発表された論文のうち、投稿論文と領域が似ているものを2、3編ダウンロードして読むことを推奨します。論文を採択するときに編集者が何に注目しているかが、さらによく理解できるでしょう。どの実験と分析が必要かつ重要だったか? そうではなかったものはどれか? これは、著者らに研究の修正のためのアドバイスをどう与えるかに関するガイドとなります。Nature のいくつかの雑誌2のように、学術誌が査読報告書を公開している場合、それらも読んでおきましょう。投稿論文の評価を練り上げる際に素晴らしいガイドとなるでしょう。

論文を評価する

編集者から求められていることがよく理解できたら、投稿論文の評価を始めましょう。まずは、2度論文を読みましょう。1度目は、研究の全体的な感じと、その分野に対するインパクト/意味をつかみます。2度目は、論文の各セクションを慎重にじっくりと吟味します。

最初のステップとして、1度論文を通し読みします。その際、「この研究は(原則として)発表可能か?」という非常に重要な質問を心に留めておきます。以下のような質問を自分に問いましょう。

  • 著者らはその分野にとって現在重要なトピックを扱っているか?
  • 研究のどこが目新しいのか? あるいはこの研究は単なる派生的なものか? 著者らがこの研究で解明しようとしている重要な疑問は何か?
  • 研究設計は彼らの目的にとって適切と思われるか? それは広い意味でロバストに思われるか? あるいは、彼らの方法論において、すぐに特定できるような基本的な欠陥があるか? 通常、基本的な欠陥は、結果が妥当ではないことを示唆し、また、それによって結論の妥当性も疑われ、論文不採択の根拠となるでしょう。
  • 研究結果と図は研究設計に対し適切と思われるか? データは有意に見えるか?
  • 最後に、結論は論文に提示された証拠によって裏付けられているか?

このように最初に論文を通読した後、あなたに査読を依頼した学術誌について考えましょう。この研究は、その雑誌の領域や目新しさの意味において、そして論文によって恩恵を受ける読者にとって、適切なものでしょうか? そうでなければ、おそらくここでも不採択が確実になるでしょう。

最初に論文を読んだ段階で研究が学術誌に(1)発表可能で、(2)適切だと感じられたなら、各セクションのより徹底的な評価を始めましょう。作業に当たり、パソコンで2つのスクリーンを使うか、論文を印刷することを勧めます。そうすれば、パソコン上のウインドーを何度も切り替える手間なく、論文を読みながらメモを取ることができます。

以下は、各セクションの評価で考慮すべき事項の例です。

序論

  • 著者らは現在のその分野におけるトピックの重要性を強調しているか? そのトピックに関する既知の情報についての文献レビューは、その研究の内容を組み立てるのに十分か? これらの研究を評価するとき、著者らは主題について自分たちが専門知識を有していることを証明しているか?
  • 研究の背景となった動機は明確か? この問題に直接対処している、研究目的に関する研究上の疑問がここで特定されていなければなりません。

方法

  • 著者らは本文や補足情報の中で研究設計を明快に説明しているか? その情報は発表後の再現実験に十分か?
  • 生物医学研究および臨床研究の場合、全ての倫理的問題が適切に対処されているか?
  • 用いられている技術は、その分野で標準化・アップデートされており、条件は明確に記載されているか?
  • あなたがそれらの技術に詳しい場合、それらの技術は、得られたデータの信頼性と正確性を確実にするために、適切に用いられたか?
  • あなたがそれらの技術や統計的手法に詳しくない場合、報告書でその旨を編集者に伝えるとよいでしょう。そうすれば編集者は、必要であれば追加査読者を探すことができます。

図と結果

  • 図は明確なやり方でデータを適切に提示しているか?
  • 真実とは思えないほど出来過ぎた図はないか? あなたはいつでも、論文に提示された図を検証するために生データの閲覧を要求できます!
  • 結論を裏付けるのに必要なデータは全て提示されているか? もしそうでなければ、その研究結果を妥当なものにするためにはどんな付加的証拠が必要か? 除去するか、補足情報に移動させることができるとあなたには感じられる不必要なデータがあるか?
  • 全ての図は本文で説明されているか? 著者らは、それらのデータ間の重要な関係やパターンについて適切に考察しており、それらの重要性に関する読者の理解を高めているか?

考察

  • 著者らは既存文献との文脈において彼らの研究結果を解釈しているか?
  • 彼らの結果に矛盾する可能性があるものを含め、考察に加えられていない重要な研究はないか?
  • 研究設計に制限があれば、それを考察しているか?
  • 研究の結論と意味は、(1)提示された証拠によって裏付けられ、(2)制限があればそれを考慮に入れ、(3)その学術誌の購読者層にとって適切であるか?

論文には他にも、タイトルや要約、参考文献、謝辞など、考慮すべき側面がありますが、今回は、論文の本文に焦点を合わせることにしました。本文こそが研究の発表で最も重要だからです。

次回、「査読をする」の最終回では、あなたの徹底的な評価を編集者と著者らに伝えるために、よく練られた建設的な査読報告書を書き上げる方法についてお話しする予定です。それまでは、今回の話が、あなたの論文査読戦略を改善する役に立ってくれることを祈ります!

次回は、2021年3月号の予定です。

(翻訳:古川奈々子)

ジェフリー・ローベンズ(Jeffrey Robens)

Nature Research Academies 筆頭講師。自然科学分野で多数の論文発表と受賞の経験を持つ研究者でもある。


Nature Research Academies は、科学コミュニケーションの基礎から、よりインパクトの高い発表戦略、研究データの原則や、助成金作成、求人応募、臨床研究方法論ほか、学術界で成功するためのノウハウを提供するワークショップです。

参考文献

  1. nature.com/nature-research/editorial-policies/peer-review#writing-the-review
  2. nature.com/documents/nr-transparent-peer-review.pdf

キーワード

Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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