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中国が最大の論文発表国に躍進

Nature ダイジェスト Vol. 15 No. 4 | doi : 10.1038/ndigest.2018.180412

原文:Nature (2018-01-25) | doi: 10.1038/d41586-018-00927-4 | China declared world’s largest producer of scientific articles

Jeff Tollefson

米国立科学財団の報告書によると、各国の論文発表数の競争は激化しているものの、米国が世界の科学をリードしていることに変わりはないという。

米国立科学財団(National Science Foundation;NSF)がまとめた統計によると、このほど初めて、中国が発表した科学論文の総数が米国を上回った。

NSFが隔年で作成している報告書の最新版『Science & Engineering Indicators 2018(科学技術指標 2018; www.nsf.gov/statistics/2018/nsb20181/)』が1月18日に公開された。報告書は、中国やその他の発展途上国が科学技術への投資を増やしており、米国との競争が激化している状況を詳述している。その一方で、米国が世界の科学をリードしていることに変わりはなく、卓越した研究を行い、世界中の学生を引きつけ、科学研究の成果から価値ある知的財産を生み出していると評価する。

NSFの監督機関で、今回の報告書を作成した米国立科学審議会(National Science Board;NSB)の議長であるマサチューセッツ工科大学(米国ケンブリッジ)の地球物理学者Maria Zuberは、「米国は今でも科学技術の世界的なリーダーですが、世界は変わろうとしています」と言う。彼女は、他の国々がアウトプットを増やすにつれて、世界の科学活動の中で米国が占める割合は低下しつつあると指摘する。「居眠り運転をしている場合ではありません」。

論文出版の数については、すでに明らかな変化が見られる(「変わりゆく風景」参照)。NSFがエルゼビア社の抄録・引用文献データベースScopus(スコーパス)のデータを基に分析を行ったところ、中国は2016年に42万6000編以上の論文を出版しており、論文全体に占める割合は18.6%であった。これに対し、米国の論文出版数は約40万9000編であった。インドの論文発表数は日本を超え、その他の発展途上国も増加傾向が続いている(訳註:ちなみに上位50カ国中、この10年間で論文発表数が減少したのは日本だけである。報告書 第5章 表5-22)。

変わリゆく風景
NSFの分析によると、各国で1年間に出版される科学論文の数は、中国が最も多いという。工学系の論文出版数は米国より中国の方が多いが、生物・医学系の論文出版数は米国の方が多い。 | 拡大する

SOURCE: NSF

なお、NSFの分析では、各論文に与えられた発表数1を共著者の数で分割したものを集計する、Fractional Count(FC)という方法を採用している。これに対しScopusの分析では、共著者全員にそれぞれ発表数1が与えられる。つまり、論文に名を連ねる研究者の数が増えるほど、発表数が増えることになる。結果的に、Scopusの分析では米国の論文発表数が第1位になっている。

報告書によると米国は、引用数が特に多い論文を出版している国としては、スウェーデン、スイスに次いで第3位だった。第4位はEU諸国、第5位は中国だった。また、科学技術分野の博士号取得者が最も多い国は、今回の調査でも米国であり、同国は海外で修士号や博士号を取得しようとする世界の学生の主な留学先になっている。とはいえ、米国を留学先に選んだ学生は2000年には留学生全体の25%だったが、2014年には19%に低下している。

研究開発費が最も多かった国は米国で、2015年には約5000億ドル(約53兆円)と、世界全体の26%を占めていた。第2位は中国で、約4000億ドル(約42兆円)だった。しかし、米国の研究開発費が同国の経済活動に占める割合がほぼ一定であるのに対し、中国では近年、研究開発費の割合が着実に上昇している。

今回の報告書は、世界の中で米国の科学の国際的地位への懸念が強まっている時期に公開された。米国ワシントンのシンクタンク、ブルッキングズ研究所の上級フェローMark Muroは、この報告書は米国の科学技術が直面する危機を人々に知らしめるだろうと言う。彼は、米国の科学への支出の傾向は間違った方向に進んでいる上、女性およびマイノリティーの比率が低いために研究者の人材プールも不十分だと指摘する。さらに、海外に製造拠点を移していった結果、半導体製造などの基幹産業が空洞化しているという。

NSFは今回の報告書に、技術移転と技術革新に関する章を初めて追加した。そのデータは、特許や知的所有権からの収入、ベンチャーキャピタルによる革新的な技術への資金提供については、現在も米国が世界一であることを示している。「国家のイノベーション能力は生産性を向上させる主要な要因であり、生産性の向上は国家の繁栄につながります」とMuroは言う。「今回のデータは、そもそもなぜ私たちがこれらの指標を気にするのかを思い出させてくれるものです」。

(翻訳:三枝小夜子)

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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