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余震の予測もAIで

Nature ダイジェスト Vol. 15 No. 11 | doi : 10.1038/ndigest.2018.181104

原文:Nature (2018-08-29) | doi: 10.1038/d41586-018-06091-z | Artificial intelligence nails predictions of earthquake aftershocks

Alexandra Witze

ニューラルネットワークを用いて本震後に余震が発生する場所を予測する手法は、従来の予測法よりも正確であることが示された。

2016年の熊本地震では、本震と余震により50人の死者が出た。 | 拡大する

TARO KARIBE/INTERMITTENT/GETTY

13万以上の地震のデータを用いてニューラルネットワークを訓練したところ、標準的な手法よりも高い精度で余震が発生する場所を予測することができた。科学者たちはこの研究について、大地震の際などに生じる地中の応力の変化が余震を引き起こす仕組みを新しいやり方で探究できるようにするものだと評価する。また、地震のリスクを評価するための新手法を開発している研究者にとっても役立つ可能性がある。この研究結果は、2018年8月29日、Natureに報告された1

ハーバード大学(米国マサチューセッツ州ケンブリッジ)の地震学者で、今回の論文の筆頭著者であるPhoebe DeVriesは、「私たちの今回の研究は、余震の予測において機械学習にできると考えられていることの表面をかすったにすぎません」と言う。

本震後に発生する余震は、本震と同程度か、それ以上の被害をもたらすことがある。2010年9月にニュージーランドのクライストチャーチ近郊でマグニチュード7.1の地震が発生した際、死者は1人も出なかったが、本震から5カ月以上たってから市の中心部により近い場所で発生したマグニチュード6.3の余震では、185人もの死者が出た。

地震学者は一般に、余震がどの程度の規模になるかは予測できるが、余震が発生する場所の予測には手こずっている。これまで、ほとんどの科学者は、地震によって隣接する岩盤にかかる応力がどのように変化するかを計算し、その変化が特定の場所で余震を引き起こす可能性を予測する、という手法を用いてきた。この応力–破壊法は、多くの大規模地震の余震のパターンをよく説明することができるが、常にうまくいくわけではない2

そこでDeVriesらは、過去の地震について入手可能な大量のデータを利用して、より良い予測法を考案することにした。「このような手法において、機械学習は非常に強力なツールになります」とDeVries。

ニューラルネットワークの利用

科学者たちは今回、13万1000以上の本震と余震の組み合わせのデータを使って、ニューラルネットワークの訓練を行った。データの中には、2011年3月11日に日本を襲い、甚大な被害をもたらしたマグニチュード9.1の大地震など、最近発生した巨大地震もいくつか含まれている。ニューラルネットワークの訓練に当たり、研究チームは、それぞれの本震の周囲領域を1辺5kmのセルに分割した。そして、発生した地震と、個々のセルの中心での応力変化のデータを学習させた後、それぞれのセルで1つ以上の余震が発生する確率を計算させた。つまりニューラルネットワークは、個々のセルでの余震の発生を独立した小さな問題として扱っているが、応力が岩盤中をどのように連続的に波及するかは計算していない。

研究チームは、機械学習に用いたものとは別の独立した3万件の本震–余震事象について、このシステムを用いて予測試験を行った。すると、ニューラルネットワークは通常の応力–破壊法よりも正確に余震が起こる場所を予測することができた。そして、恐らくもっと重要なのは、ニューラルネットワークが、本震後に地中で発生していた可能性のある物理的変化も暗示していたことだ、とDeVriesは言う。これは、金属などの材料中の応力変化を記述するパラメーターで、地震の研究に用いられることは滅多にないようなものの潜在的な重要性を示唆している。

ロスアラモス国立研究所(米国ニューメキシコ州)の地震学者Daniel Trugmanは、今回の研究結果は、これまでとは違った目で余震を調べるきっかけになるだろうと期待する。「機械学習アルゴリズムは私たちに、地震の誘発の基礎にある複雑な過程について、重要なことを教えてくれています」。

スタンフォード大学(米国カリフォルニア州)の地球物理学者Gregory Berozaは、今回の研究で余震の予測について最終的な結論がもたらされたわけではないと釘を刺す。例えば、この研究では、地震波が地球の内部を伝わる際に生じるタイプの応力の変化を考慮していない。彼は、「この論文は、余震の誘発に関する新たな解釈として理解するべきです」と言う。「重要な研究であり、他の研究者の刺激になります」。

(翻訳:三枝小夜子)

参考文献

  1. DeVries, P. M. R., Viégas, F., Wattenberg, M. & Meade, B. J. Nature 560, 632–634 (2018).
  2. Meade, B. J. et al. Geophys. Res. Lett. 44, 11409–11416 (2017).

キーワード

Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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