News Feature
19 December 2013
とっておき年間画像特集2013
画像の右下を注意深く見てほしい。ごく小さい点があることに気づくだろう。これは、10億km以上離れたところから見た地球の姿である。太陽からの逆光を受けて光る環を擁した、この美しい土星の眺めは、NASAの探査機カッシーニが2013年7月に土星の陰に入った後に撮影した141枚の画像を組み合わせることで得られた。
Credit: SATURN: NASA/JPL-CALTECH/SSI
この巨大な火球は、ウラル地方のチェリャビンスク州で目撃された隕石で、上空約30kmで爆発し、太陽よりも明るく光り輝いた。この隕石は、1908年のツングースカ隕石以降、地球に落下した既知の隕石の中で最大であり、その落下場所はツングースカ隕石と同じロシアだった。
Credit: METEOR: MARAT AHMETVALEEV
現代の化学者は個々の原子を画像で捉えることにほとんど関心を持たなくなっている。しかし北京の研究グループが原子間力顕微鏡を巧みに使い、水素結合を初めて画像で捉えた。4個の8-ヒドロキシキノリン分子の間に見える薄い線が水素結合である。
Credit: HYDROGEN BOND: XIAOHUI QIU/SCIENCE/AAAS
これは新しい神経画像化法CLARITYによって得られた初めての「透明な脳」の画像である。CLARITYは、洗浄剤で脂質を洗い流して脳(この場合はマウスの海馬)を透明化する手法で、従来の二次元的な切片像を使わずにニューロンの三次元的な配置を明らかにできる。
Credit: BRAIN: KWANGHUN CHUNG & KARL DEISSEROTH/HHMI/STANFORD UNIV.
まるで美術展示品のようだが、これは日本にあるγ線検出器である。この装置によって、陽子20個と中性子34個からなるカルシウム原子が安定することを示す証拠が得られ、中性子数34が原子核安定の「魔法数」であることが明らかになった。
Credit: γ-RAY DETECTOR: SATOSHI TAKEUCHI
この2つの画像は、1個の理想的な花の周りの微弱な電場を示したもの(左:スカラーポテンシャル、右:電場強度)。こうした電場をマルハナバチが感知していることを、英国の研究チームが見つけた。マルハナバチが去るときに正の電荷を残し、他のハチはそれを手掛かりにして、同じ花を訪れるべきかどうかを判断しているのである。
Credit: FLOWERS: DOMINIC CLARKE/SCIENCE/AAAS
ポリアクリロニトリルでできたこのナノ繊維は常識外の性質を持つ。細くなるほど強く丈夫になるのだ。この極細繊維は、わずかな電荷で液体から繊維を紡ぎ出す技術「電界紡糸」で作られたもので、その強度は、光学や電子工学で現在使われているもっと太いポリアクリロニトリル繊維の10倍である。
Credit: NANOFIBRES: DIMITRY PAPKOV/JOEL BREHM/YURIS DZENIS
このSFっぽい光景は、太陽熱発電施設である。太陽光を集め、その熱で水を蒸発させてタービンを回し発電する太陽熱発電施設は、2013年に数も規模も増大した。写真にある米国カリフォルニア州イバンパードライレイクの施設もその1つである。一部の試算では、太陽熱発電が風力発電をじきに追い抜くと予測されている。未来の一端が垣間見えるようだ。
Credit: SOLAR STATION: JAMEY STILLINGS
オリンギト( Bassaricyon neblina )は、アンデス山脈の森で見つかった陸生哺乳類の新種でアライグマ科に属する。この動物の標本は博物館に存在していたが、これまで種が誤って同定されていた。調査の末、2013年8月に正式に新種として記載報告された。また、かつて米国の動物園で1匹のオリンギトが、それと知らずに飼育されていたことも分かった。
Credit: OLINGUITO: TUI DE ROY/MINDEN PICTURES/ネイチャー・プロダクション
銀河NGC 253からは毎年、強力な銀河風によって太陽9個分に相当する質量が放出されている。チリにあるALMA電波望遠鏡が、この風に含まれる一酸化炭素をこれまでにないほど詳細に画像化し、放出の程度を明らかにした。放出が弱い領域は赤色、強い領域は青紫色で表している。
Credit: GALACTIC WIND: ERIK ROSOLOWSKY/ALMA RADIO TELESCOPE
この骨(画像は横断面)は約1億9500万年前のもので、中国の骨化石を大量に産する地層で見つかった恐竜の胚の骨約200個のうちの1つである。これらの貴重な化石から、恐竜の発生に関する新たなデータが得られた。
Credit: DINOSAUR EMBRYO: AARON LEBLANC
エクアドルのトゥングラワ山は2010年からほぼ絶え間なく噴火しており、また、少なくともBC 7750年から散発的に噴火してきた。この火山からはこれまで多くの科学的データが得られている。2013年には、BC 1100年の噴火で地域住民が壊滅的被害を受けたことが明らかになり、アンデス山脈における最古の火山災害の1つがこの火山によるものであることが分かった。
Credit: VOLCANO: JOSE JACOME/EPA/CORBIS
翻訳:船田晶子
Nature ダイジェスト Vol. 11 No. 2
DOI: 10.1038/ndigest.2014.140212