Nature ハイライト

生化学:代謝で腎臓損傷を予防

Nature 565, 7737

S-ニトロシル化はシステイン残基の酸化的修飾の1つで、S-ニトロソチオール(SNO)類を形成する。この修飾はタンパク質機能を調節し、タンパク質にSNOを付加するS-ニトロシラーゼや、タンパク質からSNOを除去するデニトロシラーゼなどの酵素装置により制御される。出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)では、代謝中間体の補酵素A(CoA)は、一酸化窒素(NO)と結合してS-ニトロソ-CoA(SNO-CoA)を形成することで、NOの内因性供給源として働く。哺乳類のアルドケト還元酵素1A1a(AKR1A1a)は、酵母のSNO-CoAデニトロシラーゼの機能的ホモログだが、その機能については分かっていなかった。著者たちは今回、AKR1A1がSNO-CoAを代謝し、NO基を供与するその活性を阻害することを示している。マウスではAkr1a1a遺伝子をノックアウトすると、タンパク質のS-ニトロシル化が増加し、NO依存的な様式で急性腎臓損傷が予防される。腎臓損傷予防に関与するS-ニトロシル化された主要な代謝タンパク質の1つは、解糖系の最終段階を触媒する糖分解酵素ピルビン酸キナーゼM2(PKM2)である。S-ニトロシル化によりPKM2を抑制すると、酸化ストレスを防ぐNAPDHやグルタチオンの産生の増加が可能になり、それによって腎臓損傷が予防される。マウスの腎臓でPKM2を遺伝的に抑制すると、NADPHとグルタチオンが増加し、脂質の過酸化が低下し、腎臓障害を防ぐことができる。従って、腎臓でのAKR1A1aあるいはPKM2の活性を抑制することは、マウスでの虚血性再灌流損傷の際に毒性ラジカルによる腎臓障害を制限するこれまで知られていなかった方法である。

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