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進化学:新たな化石から明らかになった初期の軟体動物形態

Nature 542, 7642

庭にいるカタツムリからマッコウクジラと戦うダイオウイカまで、外見の大きく異なる多様な動物群で構成される軟体動物門は、最も繁栄を遂げた動物門の1つである。しかし軟体動物は、約5億年前のカンブリア紀に急速に進化したため、その初期の歴史、特に最初期の形態に関しては、今なお活発な議論が続いている。今回、モロッコのオルドビス紀のFezouata累層(バージェス頁岩型の動物相で知られる)から発見された化石は、この問題を解決するための手掛かりとなる可能性がある。この化石は、頭部に1枚の特徴的な殻板を持つ扁平なナメクジ様の動物のものであり、頭部の殻板以外は体全体が棘で覆われている。興味深いのは、この動物が、軟体動物の特徴的な形質であるやすり状の舌、歯舌を有することである(ナメクジがレタスを極めて効果的に食い尽くすのはこの歯舌のためである)。今回の系統発生学的解析から、この新たな生物は、これまで軟体動物やステム群腕足動物などとしてさまざまに分類されてきた他の複数の生物群と共に、軟体動物のAculifera類(殻板を8枚持つヒザラガイ類および殻のない無板類)のごく基部に、貝殻類(その他全ての軟体動物)と対するものとして位置付けられた。この知見は、初期の軟体動物が殻を1枚だけ有していたことを示唆している。

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