Nature ハイライト

生態:コアラの訪問はユーカリの化学成分しだい

Nature 435, 7041

コアラの食餌習性を10年にわたって調査した研究から、ユーカリの木がコアラに食べられないために作り出す有毒な化学物質が、コアラの個体群に影響を及ぼしているらしいことがわかった。ホルミル化されたフロログルシノール化合物(FPC)と呼ばれる化学物質を高濃度に作るユーカリの木ほど、コアラを寄せつけない傾向が高かったのである。これはつまり、最もサイズが大きく食べでがありそうな木が実は、往々にしてコアラには嫌われるということだ。  飼育下のコアラ(Phascolarctos cinereus)はこうした有毒化学物質の濃度が高い植物を避けることがわかっている。しかし野生では、木のサイズや接近しやすさ、捕食の危険性といった他の変動要因が、コアラによる木の選択に影響している可能性があると、B MooreとW Foleyは今週号で指摘している。2人はユーカリノキ属のEucalyptus globulusE. viminalisの2種について、木のサイズやFPC濃度、窒素レベル(栄養価の指標になる)を測定した。総じて大きい木ではコアラの訪問回数が予想値より少なく、これは大きい木が大量のFPCを含むからである。それに対して中くらいの木は、予想されるより多く葉を食べられてしまう可能性がある。

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