Nature ハイライト

地球:ヘリウム3はすべてが失われたのではない

Nature 436, 7054

地球深部には、我々の惑星が誕生したときからずっと残されてきた始原的な岩石の貯蔵庫が存在するのだろうか。従来、地球化学的データからはその存在が肯定されてきたが、地震学的な証拠はそのような貯蔵庫が残っていることと矛盾するようにみえる。今週号で、C ClassとS Goldsteinはこの矛盾を解消することができる地球化学的な理論を提案している。  こうした疑問が生じるのは、ハワイなどの海洋島の岩石がヘリウム3を比較的大量に含んでいるからである。ヘリウム3は他の元素の放射壊変により生成されないことから、この同位体の主な部分は地球が最初に形成された時期から残ったものだとされている。ヘリウム3に富んだ鉱物は、マントル深部から湧き出てきたままの始原的岩石で、地球表面近くで部分溶融した際の「脱ガス」を以前に起こしたことのないものにのみ含まれると考えられてきた。  しかし、地震学者はこの証拠を疑いの目で見てきた。プレートテクトニクスの原動力となり火山を作ってきた混合と融解を、マントルの大部分が免れてきたことを示す証拠はないというのである。  ClassとGoldsteinは海洋島の岩石中に含まれる他の鉱物からは別の過程が考えられることを明らかにした。つまり最もヘリウム3に富んだ岩石でも、大洋中央海嶺で見つかったもののようなこれまでに融解したことがある岩石と似た組成を持つ元素を含んでいるというのだ。このことは、融解したときにマントルから失われるヘリウムの量がこれまで考えられてきたよりも少ないと単純に考えればうまく説明できる。裏付けとなる物理実験は必要だろうが、彼らのモデルはヘリウム3の含量についての説明となる。

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