Nature ハイライト

物理:渦巻によって物質の新しい相が明らかになる

Nature 435, 7045

新しい形の超流動体が作られたようだ。M Zwierleinたちは、いわゆる強く相互作用するフェルミ気体、すなわち絶対零度より約50nK高い温度に保った原子トラップ中のリチウム原子雲中に、この奇妙な流動状態が存在する証拠を報告した。  超流動体では量子力学的効果によって、混んだ道路での車の流れのようにすべての粒子がコヒーレントに運動するようになる。つまり、他のすべての粒子を減速せずに1個の粒子だけを減速するのはむずかしいということだ。そのため、このような流体は止まらずに流れ続けるように見える。低温のヘリウム4は、絶対零度よりほんの数度高い温度で超流動体になり、ビーカーの壁を登れる。  超流動の発生はボース・アインシュタイン凝縮(BEC)現象と密接に関係していると考えられている。この現象は極低温原子気体で、10年前に初めて観察された。BECと超流動はともに、特定の量子力学的性質を持つボソンと呼ばれる粒子のみで起こると予想される。しかし、やはり基本粒子の一種であるフェルミオン粒子は2個が集まってペアを作ることができ、ボソンのようにふるまえる。このため、ヘリウム3は超流動体になり得る。これは超伝導で見られる同類の現象で、電子がペアになるのと基本的に同じ過程である。  今週号では、Zwierleinたちが、フェルミオンであるリチウム6と呼ばれるリチウム同位体原子のペアが凝縮して超流動体になることを示した。これは既に予測されていたが、今まで決定的な観察結果は得られていなかった。極低温気体中に渦巻状の規則的配列が出現することによって、超流動状態の存在が証明されたのである。

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