Nature ハイライト

医学:H5N1ウイルスの伝播にかかわる因子

Nature 486, 7403

H5N1鳥インフルエンザウイルスがヒトからヒトへ感染する能力を獲得できるかどうかは、これまではっきりしていなかった。ウイルスは、ヘマグルチニン(HA)タンパク質を介して宿主特異的細胞受容体に結合するが、これまでの研究では、HAが変化してヒト型受容体に結合できるようになってもそれだけでは不十分で、H5N1ウイルスがフェレット(ヒトからヒトへの伝播に関する最良の動物モデル)で呼吸器へ飛沫感染するようにはならないことがわかっている。今井正樹(ウィスコンシン大学マディソン校)たちは、H5亜型ウイルス由来のHAを持ち、そのほかの遺伝子はパンデミックを起こしたヒトH1N1インフルエンザウイルス由来のウイルス、すなわちリアソータントウイルスで、フェレット間での伝播を可能にするために必要なのは、HAのわずか4か所の変異だけであることを明らかにしている。H5N1鳥インフルエンザウイルスそのものの哺乳類への伝播には、さらにほかの鳥ウイルス遺伝子の変化がおそらく必要だろうが、ヒトH1N1ウイルスとH5N1ウイルスは遺伝的に互換性があり、ヒトにはH5ウイルスに対する免疫がないため、H5亜型のHAを持つウイルスの出現はパンデミックを引き起こす可能性がある。H5 HAのどのような変異が哺乳類間での伝播への馴化に関係するかがわかれば、パンデミックを引き起こしそうな馴化したH5N1ウイルスの発見と監視に役立つだろう。

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