Nature ハイライト

物性:鉄ニクタイドにおける多重転移

Nature 486, 7403

電子ネマティック性は、電子集団が一方向性を持った自己組織化を起こして、基本格子の回転対称性を破ろうとする性質であり、鉄ニクタイド系と銅酸化物系の高温超伝導体で観測されている。しかし、外部からの駆動力がない場合に構造相転移温度(Ts)より高い温度で電子ネマティック性が存在しうるかどうかはわかっていなかった。今回、笠原成(京都大学)たちは、鉄ニクタイド超伝導体BaFe2(As1−xPx)2の磁気トルク測定について報告し、ネマティック性がTsよりかなり高い温度で現れ、磁気秩序を持たない超伝導領域まで広がっていて、その結果、銅酸化物超伝導体の擬ギャップ相図に似た相図が得られることを明らかにしている。さらに彼らは、真の相転移であるネマティック転移が起こるT*と、真の相転移ではないが「メタネマティック」転移を示すTsT*未満)という2つの温度を特定している。

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