Nature ハイライト

物理:時間の中に消え失せる

Nature 481, 7379

天然構造体では不可能なやり方で電磁波を操作できる材料の開発が大幅に進み、ついに物体を「空間の穴」の中に隠してしまえる空間クローキングのようなものが設計されるようになった。しかし、そのようなデバイスの機能は、現在は限られている。空間クローキングに似たおもしろいアイデアは、時間の中に隠す「時間クローキング」の発明である。これは、プローブ光ビームの前半部を加速し後半部を減速することによって、空間ではなく時間に人工的に穴を作るというものである。Fridmanたちは今回、光ファイバーを用いた系で、そのような時間クローキングを実証している。この系では、プローブビームに明確な乱れをもたらす事象が、時間クローキングを発動させると全く起こっていないように見える。この効果は、光を遅い(赤色)成分と速い(青色)成分とに分割して時間ギャップを発生させる時間分割レンズを用いて達成される。今回の時間クローキングはピコ秒(1秒の1兆分の1)の時間スケールで実現されたが、この結果は完全な「時空間クローキング」に向けた重要な一歩になるかもしれない。

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