Nature ハイライト

生理:1個の細胞も正しく時を刻む

Nature 430, 6995

目覚まし時計が鳴る前に目を覚ますのは誰でも結構経験しているらしい。飛行機の旅をする人には時差ボケのつらさはお馴染みだろう。このような体のリズムは、概日振動体とよばれる生化学機構によって生み出されるもので、哺乳類、昆虫、植物、菌類、ラン藻類(シアノバクテリア)など、さまざまな生物に幅広く見られる。このような生化学的振動体は、外的・内的要因のゆらぎ、たとえば、振動体を構成、制御しているタンパク質などの化合物の濃度変化など、に対する回復力が意外なことにとても高い。ヒトのような多細胞生物では、概日時計の安定性は、細胞間の相互作用によるチェックと調整とでうまく説明できるが、単細胞生物でも同じことがいえるのだろうか。 I Mihalcescuたちは、単細胞生物であるラン藻の一種Synechoccocus elongatesの概日リズムの安定性について報告している。概日時計による制御のもとでの遺伝子の発現を一個の細胞で測定したところ、概日時計が実際に個々の細胞に備わるものであることが明らかになった。多細胞生物にある多数の概日時計とは対照的に、振動体どうしの相互作用は無視できるほど小さいようであることから、単細胞生物の概日時計の安定性は細胞内の生化学的ネットワークによって確保されているらしい。

2004年7月1日号の Nature ハイライト

目次へ戻る

プライバシーマーク制度