Nature ハイライト

医学:脂肪細胞と造血能の関係

Nature 460, 7252

成体の骨髄は多数の脂肪細胞を含んでおり、その数は造血能と逆相関している。悪性貧血や白血病などの造血過剰疾患は、長骨の脂肪髄への造血系の浸潤を伴うのが普通である。脂肪細胞は造血の調節に関与しているのか、それとも単に増殖して骨髄空間を埋めているだけなのかはわかっていなかった。だが今回、脂肪細胞は数の不足を補っているどころではなく、骨髄微小環境で極めて重要な生理的役割を果たしているというのが正解らしいとわかった。マウスでの実験で、脂肪細胞の豊富な骨髄では、脂肪細胞が乏しい骨髄に比べて造血性の幹細胞と前駆細胞が少ないことが示された。遺伝操作による「無脂肪」マウスや、脂肪細胞の産生を阻害する薬物を投与したマウスでは、骨髄移植後の新たな血球産生が野生型マウスに比べて速く、骨髄での脂肪細胞形成の阻害は、臨床での骨髄移植の場合にも造血能回復を促進するかもしれない。

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