Nature ハイライト

進化:複雑な環境で被食者は擬装して捕獲を逃れる

Nature 431, 7004

刺す昆虫など捕食者の餌になりにくい多くの種は、色や模様がお互いによく似通っている傾向が見られる。では、この「ミュラー型擬態」はどうやって生じるのだろうか。今回の研究によると、答えは複雑性にあるらしい。捕食者が目にする獲物のメニューに品数が多ければ、擬態が進化しやすくなるというのである。 C D Beatty、K Beirinckx、T N Sherrattの3人は人間の被験者に、あるコンピューターゲームをしてもらった。被験者は「捕食者」となり、バーチャルな環境に点在するさまざまな色や模様の人工の「獲物」を見つけて攻撃するが、その中にはおいしく食べられる獲物もあればまったく食べ物にならないものもある。 おいしく食べられる種と、数は多いがまずい種、そして数が少なくてまずいテスト対象種からなる単純な系では、テスト対象の希少種が受ける攻撃率は、この種が「おいしい種」あるいは「もっと数の多いまずい種」のどちらかに似ている場合、またはどちらにも似ていない場合であまり変わらなかった。これからすると、単純な系では、希少な種はたとえうまく擬態しても生き残って増えることはできないらしい。ところが種数の多い複雑な系では、希少種の擬態が中途半端な出来でも、被験者は惑わされてこの種を避けるようになった。これはおそらく、現実世界でこうした派手で目立つことの多い形態が進化できる仕組みを示すものだろう。

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