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進化:緑の香りとオキシリピン経路

Nature 455, 7211

オキシリピンは、脂肪酸から作られる生理活性をもつ脂質である。植物では、オキシリピン経路により、ジャスモン酸として知られる、プロスタグランジン類似の植物ホルモン群や、さまざまなストレスを和らげたり、果物や野菜に特徴的な芳香を与えたりする「緑の香り」(緑の葉の揮発成分)が作られる。今回、オキシリピン経路の酵素であるアレンオキシドシンターゼ(AOS)の基質と結合していない場合と、結合した場合の結晶構造が決定された。これらの構造により、酵素が重要な中間体の反応性を制御する仕組みが明らかになった。また、ジャスモン酸の合成にかかわるAOSの活性部位の重要なアミノ酸に変異が起こると、「緑の香り」を合成する酵素であるヒドロペルオキシドリアーゼに変わることが示された。さらに比較研究から、オキシリピン生合成にかかわる遺伝子は植物と動物の最終の共通祖先には存在したが、進化の過程で一部を除くすべての後生動物の系統から失われたことが示唆された。

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