Nature ハイライト

生態:生物保全活動の費用対効果を最大にするには

Nature 440, 7082

「保全用資源配分問題」は、全世界の生物保全活動が直面している最も緊急の問題の1つである。つまり、生物多様性のホットスポットや固有鳥類生息地域、生態地域といった生物多様性の保全優先地域に対して、限られた予算や人材などの資源をどのように配分すべきかということだ。単に種の豊富さだけで優先順位をつけると、絶滅が非常に危惧されるにもかかわらず、種の豊富さが少しばかり低い地域は見逃されてしまう可能性がある。また、投入資源の相対コストが明らかでない場合、大量の資源を投入しても保全の成果があまり上がらないような地域に資源が配分されてしまうかもしれない。  H Possinghamたちは今回、資源配分を最適化するために、数学アルゴリズムに基づいた決定理論の使用について検討した。そして、一例として東南アジアの5か所の保全優先地域を対象に、生物多様性の程度や絶滅の脅威についてだけでなく、保全活動のコストや、投入資源に対して得られる成果の時系列変化、景観動態、およびデータの不確実性を説明する枠組みを示している。  Possinghamたちは、ほかの投資と同様に、生物保全への資源投入も評価を受けるべきだと論じている。つまり、目標を明確に示し、この目標がどの程度達成されたかを評価すべきだというのだ。  実証例の中では固有鳥類種を生物多様性の代理指標とし、保全される種の数を最大にするためには、まず最初にスラウェシ島の絶滅危惧種が保全できるまで全資源を投入することを推奨しており、それから、スマトラ島やボルネオ島、ジャワ島へと資源投入を進めていき、最後にマレーシアに取りかかるべきだと述べている。

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