Nature ハイライト

腫瘍生物学:カロリー制限は脂質代謝の脱調節を介して腫瘍増殖を減少させる

Nature 599, 7884

がん細胞では代謝要求が変化しているため、現在いくつかの臨床試験で、患者ケアの補助としての食餌介入が調べられている。そうした食餌介入の中でも、カロリー制限(CR)とケトン食(KD)という2種類の低血糖食が最も注目を集めており、それは、これらがどちらもグルコースレベルとインスリンレベルを低下させ、複数の動物モデルで腫瘍増殖を遅らせることができるからである。今回M Heidenたちは、膵臓がんマウスモデルで両方の食餌の効果について調べ、血糖が関係しない1つの機構を発見した。CRは全身や腫瘍で脂質レベルを低下させて腫瘍増殖を抑制するが、KDではそれが起こらないことが分かった。機構としては、CRは代謝酵素であるステアロイルCoAデサチュラーゼ(SCD)の活性を低下させて、これががん細胞の低脂質環境への適応を阻害し、腫瘍内の不飽和脂肪酸と飽和脂肪酸のバランスを乱す。対照的に、KDでは脂肪含有量が高いため、脂質利用可能性が増加し、腫瘍内での飽和脂肪酸に対する不飽和脂肪酸の割合が維持される。

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