Nature ハイライト

分子生物学:m6A RNAのメチル化が内在性レトロウイルスの運命を統制する

Nature 591, 7849

内在性レトロウイルス(ERV)はゲノムに組み込まれた多数のさまざまなレトロウイルス配列のグループであって、RNAを中心とした生活環を通じてゲノム調節と細胞生理に影響を及ぼす。ERV抑制の失敗は、がん、不妊、老化、神経変性疾患と関連付けられている。今回我々は、マウス胚性幹細胞で偏りのないゲノム規模のCRISPRノックアウトスクリーニングを行い、m6A RNAのメチル化がERVを制限する方法であることを突き止めた。ERVのmRNAメチル化を触媒するのは、METTL3(methyltransferase-like 3)–METTL14タンパク質で、METTL3–METTL14をその補助サブユニットであるWTAP、ZC3H13と共に欠乏させると、その5′非翻訳領域が標的となって、IAP(intracisternal A particle)のmRNA存在量、および関連するERVKエレメントの量が特異的に増えることが分かった。制御されたオーキシン依存的分解を使ってMETTL3–METTL14酵素複合体を分解することによって、IAPのmRNAとタンパク質の存在量が動的に変化し、これはm6A触媒反応と逆相関することが明らかになった。METTL3–METTL14の両方を欠乏させた場合のクロマチン状態とmRNAの安定性を監視することにより、m6Aメチル化は、主としてIAP mRNAの半減期の短縮によって作用すること、またこれが起こるのはm6Aリーダータンパク質のYTHDFファミリーが引き寄せられるためであることが分かった。これらの結果をまとめると、RNAメチル化は反応性のERV由来RNA種の除去によって細胞の完全性を維持する防御効果をもたらしており、転写の抑制がそれほど厳密でない場合には、これが特に重要となる可能性がある。

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