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進化学:巨大なハイギョゲノムが明らかにする脊椎動物による陸地の征服

Nature 590, 7845

ハイギョ類が属する肉鰭類は、デボン紀に陸地を「征服」し、最終的にはヒトを含む全ての陸生脊椎動物を生み出した分類群である。今回我々は、あらゆる動物の中で最大のゲノムを持つことが知られているオーストラリアハイギョ(Neoceratodus forsteri)の染色体品質のゲノムを決定した。オーストラリアハイギョのゲノムはサイズがヒトゲノムの約14倍と非常に巨大で、その大部分は、反復配列が非常に多い(約90%)巨大な遺伝子間領域およびイントロンに起因しており、内容は、条鰭類のものよりも、主に長鎖散在反復配列からなる四肢類のものに似ていた。このハイギョゲノムは、サンショウウオ類の巨大なゲノムとは異なる機構を介して、独立に拡大し続けていることが分かった(その転位性遺伝因子は今なお活性を有する)。完全にアセンブリされた17のハイギョ大染色体は他の脊椎動物の染色体とのシンテニーを維持しており、全ての小染色体は祖先的な脊椎動物の核型との保存された古い相同性を維持していた。今回の系統ゲノミクス解析は、ハイギョが四肢類に最も近縁な現生動物群として進化的に重要な位置を占めるという過去の報告を裏付けるものであり、陸生化に関連する新機軸の数々を解明する上でのハイギョの重要性を強調している。ハイギョの陸上生活への前適応には、肉鰭内のhoxc13sall1といった発生遺伝子での肢様の発現の獲得が含まれる。ハイギョ類に見られる四肢類様の生物学的特徴には、進化速度の増大と、肺サーファクタントや嗅覚受容体遺伝子ファミリー(空気中のにおいの検知に関わるタンパク質をコードする遺伝子群)の拡大といった絶対的な空気呼吸に関連する遺伝子の重複が寄与したと考えられる。以上の知見は、脊椎動物進化におけるこの重大な移行についての理解を進展させるものである。

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