Nature ハイライト

神経回路:Fosニューロンネットワークが持つ双方向性の細胞体周辺抑制の可塑性

Nature 590, 7844

行動経験は、特定事象の符号化や再生に重要となる疎なニューロン集団でFOS転写因子を活性化する。しかし、経験が回路を再構成してFos活性化細胞のネットワークを確立する機構については、限られた知識しかない。また、FOSが直近の神経活動のマーカーとして役立つ他にもこの過程で必要とされるのかどうか、そしてもしそうであるならば、Fosの多くの遺伝子標的のどれが回路再構成の基礎となっているのかも不明である。今回我々は、マウスが新しい環境の空間探索を行うときに、パルブアルブミン発現介在ニューロンによるFos活性化海馬CA1錐体ニューロンの細胞体周辺抑制は強化されるが、コレシストキニン発現介在ニューロンによる細胞体周辺抑制は弱まることを示す。この双方向性の抑制調節は、FOS転写因子複合体の機能を妨げると消失する。単一細胞RNA塩基配列解読、リボソーム結合mRNAプロファイリング、クロマチン解析を電気生理学と組み合わせたところ、FOSが、複数の異なる神経ペプチドをコードするScg2遺伝子の転写を活性化して、抑制におけるこれらの変化を調整していることが明らかになった。パルブアルブミン発現介在ニューロンとコレシストキニン発現介在ニューロンは、錐体細胞活動の異なる特性を仲介していることから、抑制性シナプス入力のSCG2依存的な再構成は、in vivoのネットワーク機能に影響すると予測されるだろう。この予測と一致して、海馬のガンマ波と錐体細胞のシータ位相への連結は、Scg2非存在下で有意に変化した。これらの知見は、選択的に調節された状態を作り出すために、局所的な抑制の再配線を介してFos活性化ニューロンのネットワークを確立する上で、FOSとSCG2が指示的な役割を果たしていることを明らかにしている。こうした相反する可塑的機構が異なる抑制経路に作用して、時間経過とともに記憶の固定を支えている可能性がある。

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