神経科学:皮質応答の選択性はシナプスの数の力に由来する
Nature 590, 7844
個々の新皮質ニューロンは興奮性入力の集団によって駆動されており、これが感覚入力の特徴に対する選択性の基盤になっている。興奮性結合は、発生の過程で活動に依存したヘッブ型可塑性を介して成熟すると考えられており、シナプス前とシナプス後の活動の類似性が、一部のシナプスを選択的に増強して他を減弱するとされる。この過程を支持する証拠には、シナプス微細構造の計測、in vitroおよびin vivoの生理学研究や画像化研究の結果が挙げられる。こうした裏付けとなる一連の証拠からは、少数の強いシナプス入力がニューロンの選択性を駆動するのに対し、弱いシナプス入力は細胞体の出力との相関が弱くて全体的な活性を調節している、という予測が導かれる。しかし、皮質回路から得られる証拠は、隣接して結合した細胞対についての測定結果に限られており、この予測が皮質ニューロンに収斂する広範なシナプスについても成り立つのか、という疑問が生じている。今回我々は、in vivoでのシナプスの2光子画像化と電子顕微鏡による事後観察とを組み合わせ、フェレットの一次視覚野(V1)の単一錐体ニューロンに接続する、機能的特徴が明らかになっている興奮性入力の強さを測定した。個々のシナプスの電子顕微鏡による再構成像を強度の指標に用いたところ、視覚刺激に対する皮質ニューロン応答の選択性に、強いシナプスが支配的な役割を持つという証拠は得られなかった。選択性はむしろ、さまざまな刺激で活動するシナプスの総数に起因しているように見受けられた。また、弱いシナプスでは同時に活動する入力の空間的なクラスター化が確保されており、これが弱いシナプスの細胞体応答への寄与を高めているようである。今回の結果は、ヘッブ型の機構が皮質回路のニューロン選択性形成に持つとされる役割に疑問を投げ掛けるもので、選択性は、類似の性質を持った強弱さまざまなシナプス前ニューロンの大きな集団の同時活動を反映していることを示唆している。
2021年2月4日号の Nature ハイライト
物性物理学:室温のさびに見られる反強磁性スキルミオン
無機化学:アインスタイニウムに光を当てる
化学合成:コンピューター、次はどの実験をすればいい?
集団遺伝学:古いDNAから推測されるカリブ海地域の集団史
老化:プロスタグランジンの抑制は老齢マウスの認知機能を高める
コロナウイルス:フランスでの検査・追跡戦略の成果は芳しくない
コロナウイルス:COVID-19の死亡率には各国間で異なるパターンと一致するパターンがある
医学研究:細菌感染はマウスモデルで過敏性腸症候群を引き起こす
構造生物学:SAM複合体がタンパク質の組み込みを行う仕組み

