Nature ハイライト

核物理学:地下深くから宇宙を探る

Nature 587, 7833

宇宙における通常の物質のほとんど全ては、バリオンでできており、バリオン物質と呼ばれている。知ってのとおり、宇宙には目に見えるものよりも多くの物質が存在するようなので、ビッグバン後の宇宙の最初の数分間でバリオン物質がどれだけ生成されたかを見積もることは重要である。この見積もりの物理学的手法には2つある。1つは宇宙マイクロ波背景放射の直接的な天文学的計測によるもので、もう1つはビッグバン元素合成の理論モデルによるものである。後者の方法はこれまで、いくつかの重要な核反応の断面積が十分正確に分かっていないため、精度の点で前者に後れを取ってきた。今回、イタリア国立核物理学研究所グランサッソ研究所のLUNAコラボレーションは、重水素ガスに陽子を衝突させた結果の高精度測定を行うことで、重水素が燃焼してヘリウム3を生じる核反応の最も正確な断面積を報告している。著者たちが示しているように、この精度のレベルは宇宙初期のバリオン密度を理論的に見積もるには十分であり、そうした見積もりで得られた値は天文学的な観測結果と同様の精度であるとともに、それらとよく一致していた。

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