Nature ハイライト

原子核物理学:中性子が原子核からこぼれ落ちる理由

Nature 587, 7832

原子種を1つ選んで、その原子核に中性子を加え続けてみよう。すると、複数の安定同位体が得られるだろうが、ある時点で中性子はそれ以上くっつかなくなり、「こぼれ落ちて」しまう。こうした各原子種の中性子過剰同位体の存在限界から、いわゆる中性子ドリップラインが形成される。ドリップラインの位置を示す実験的証拠を見いだすのは極めて困難だが、ドリップラインの位置を理論的に説明するのはさらに難しいことが分かっている。酸素(陽子数Z = 8)の中性子過剰同位体までは理論によって正しく予測できるが、そうした理論予測は、より重い元素に関する最近の実験結果とは食い違っている。大塚孝治(東京大学ほか)たちは今回、ドリップラインの起源に関して、理論と実験を一致させることができると思われる機構的説明を提示している。彼らは、単一粒子描像を超える機構を用いて、フッ素(Z = 9)からマグネシウム(Z = 12)までの原子核は、次第に変形した楕円体の形をとることによって中性子の追加を受け入れていると示している。そしてこの効果が飽和する(原子核がそれ以上変形できなくなる)と、新たな中性子は直ちに放出されるのでドリップラインが生じる。

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