Nature ハイライト

炭素循環:成熟林では二酸化炭素増加の下で炭素隔離の増大は見られない

Nature 580, 7802

大気中の二酸化炭素(CO2)の増加は、植物の炭素取り込みと成長を促進し得るため、気候変動に対する重要な負のフィードバックになる。しかし、成熟林における現在の証拠は、CO2増加の下では光合成による大気中CO2の取り込みが増大しているにもかかわらず、高木の成長の増大は見られないことを示している。では、余分な炭素はどこに行くのだろうか。今回M Jiangたちは、4年間の生態系規模の開放系大気CO2増加実験で得られたデータを用いて、成熟林における炭素の行方を追跡している。その結果、光合成によって取り込まれた余分な炭素の大半が、増強された生態系呼吸によって放出されて最終的に大気中に戻っており、炭素損失の約半分を土壌呼吸が占めていることが見いだされた。今回の知見は、全球の森林におけるCO2施肥は、これまで考えられていたほど気候変動の緩和に効果的ではない可能性を示唆している。

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