Nature ハイライト

微生物学:自然免疫の策略によって毒素が中和される

Nature 579, 7798

黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)は、疾患の経過中に宿主細胞死を誘導するポア形成毒素(α溶血毒など)を産生する。K CadwellとM Kellerたちは今回、毒素が仲介する病原性と闘うための新しい自然免疫機構について報告している。この機構では、分泌オートファジー経路によってADAM10を含むエキソソームが放出され、これが細菌毒素を中和するためのデコイとして機能する。細菌のCpG DNAがこのようなエキソソームを誘導するシグナルであり、マウスに熱殺菌した黄色ブドウ球菌を注入した場合、あるいは生きた黄色ブドウ球菌を注入した場合の両方で、エキソソーム産生の増加が引き起こされることが分かった。複数のグラム陰性病原菌が細胞培養でエキソソームを誘導したことから、この現象は広く見られるものと考えられる。この機構は、宿主のオートファジータンパク質ATG16L1に依存していて、ATG16L1変異型マウスでは野生型マウスのエキソソームを移入することで、黄色ブドウ球菌に対する防御を回復できた。また、ADAM10を含むエキソソームが、α溶血毒のオリゴマー化を引き起こして不活性化することも実証された。著者たちは、これによってα溶血毒が宿主細胞の細胞膜を攻撃する能力が阻止されると提案している。

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