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Nature Sustainability に掲載された一次研究論文(Articles および Letters)について、その概要を日本語で紹介しています。

2019年5月

Perspective: 持続可能性の分子基盤に関する教育のためのシステム思考

Systems thinking for education about the molecular basis of sustainability

doi: 10.1038/s41893-019-0285-3

持続可能性の課題に取り組むには、社会の物質的基盤に目を向ける必要がある。本稿では、分子の世界に関する知識と地球や社会システムの持続可能性を融合させるうえで、「化学教育におけるシステム思考」の枠組みがどう役立つのかを明らかにしている。

Article: 世界の乾燥地域の乾燥状態と土壌微量栄養素の利用可能性の低下

Aridity and reduced soil micronutrient availability in global drylands

doi: 10.1038/s41893-019-0262-x

乾燥地域は地表の40%以上を占めており、気候温暖化とともに拡大する可能性がある。今回の分析により、世界の乾燥地域の土壌では、生物にとって欠かすことのできない金属微量栄養素の濃度が低いうえ、乾燥状態と負の相関があることが明らかとなり、生態系と食料生産の今後を脅かす恐れがあることがわかった。

Article: 有機農業だけの世界では輪作に伴う変化が食料生産に影響を及ぼす可能性がある

Changes in crop rotations would impact food production in an organically farmed world

doi: 10.1038/s41893-019-0259-5

オーガニック食品を生産するためには有機農業への転換が必要となる。有機農業では、作物の品種や輪作を管理することによって病害虫や栄養素を管理する。今回、有機農業へのさまざまな転換シナリオの解析から、コムギ、コメ、トウモロコシの栽培面積の世界的な減少の影響を埋め合わせるために、マメ、アルファルファ、クローバーなどの窒素固定作物の栽培面積を増やす必要があることが明らかになった。その場合でも、カロリー生産量は現在の水準から約27%減少すると考えられる。

Article: 気候変動緩和が食糧安全保障に及ぼす影響の複数モデルによる評価

A multi-model assessment of food security implications of climate change mitigation

doi: 10.1038/s41893-019-0286-2

食糧の安全を保障し気候変動を緩和するには、速やかな行動が必要である。複数のモデルの比較研究から、緩和政策の設計が配慮を欠いていた場合、食糧安全保障と気候変動緩和の間に負のトレードオフが生じる可能性が示された。

Article: トウモロコシによる空気質関連の健康被害

Air-quality-related health damages of maize

doi: 10.1038/s41893-019-0261-y

農業は増加しつつある多数の人口を支えているが、広範囲に影響を及ぼす。今回、トウモロコシ生産による大気汚染が健康に及ぼす影響の評価が行われた。空気質の低下によって、米国では年間390億ドルの損害に相当する4300件の若年死が生じ、気候変動による損害は49億ドルにのぼることが明らかになった。

Article: 保護区の拡大と既存の保護区の管理がもたらす利益の比較

Weighing the benefits of expanding protected areas versus managing existing ones

doi: 10.1038/s41893-019-0275-5

保護区は生物多様性の保全にとって不可欠だが、限られた資金を新たな保護区の確保と既存の保護区の管理に配分する必要がある。今回、景観モデルを用いた研究から、保護区の管理の方が最初の投資対象として優れていることが多いうえ、保護区の確保を補完するために不可欠であることが明らかになった。

Article: 米国の都市のエネルギーシェッドと再生エネルギー

City energysheds and renewable energy in the United States

doi: 10.1038/s41893-019-0271-9

任意の都市に電力を供給している発電所のネットワークと各発電所から供給される電力量をモデル化したところ、都市の電源構成(エネルギーミックス)が明らかになり、当該都市と最も多くのエネルギー供給源を共有している都市が示された。

Analysis: ネパールでの分権的森林管理による森林伐採と貧困の減少

Reductions in deforestation and poverty from decentralized forest management in Nepal

doi: 10.1038/s41893-019-0277-3

農村は世界の森林の多くを管理しているが、こうした地域密着型の森林管理が景観と人間の両方に及ぼす影響は依然として明らかになっていない。今回、ネパールでの2000年から2012年までの地域密着型の森林管理の影響について評価が行われ、森林伐採と貧困の両方で大幅な純減が明らかになった。

Analysis: 「ミレニアム開発目標(MDG)」の飲料水ターゲットはいかに達成されたのか

How global targets on drinking water were developed and achieved

doi: 10.1038/s41893-019-0269-3

ミレニアム開発目標と持続可能な開発目標についてはよく知られているかもしれないが、これらの目標がどのように形作られたかについては、明らかではなかった。今回の分析では、MDG 7Cにつながった政治的・学問的経緯と、中国とインドや各国の経済発展がその達成にどのように貢献したのかが明らかにされた。

2019年4月

Perspective: 「都市の世紀」における都市変容の持続可能性と回復力

Sustainability and resilience for transformation in the urban century

doi: 10.1038/s41893-019-0250-1

都市システムは、気候変動を始めとする地球規模の変化に適応していかなければならない。ここでは、都市システムを取り上げ、都市の持続可能性と回復力は相補的だが互換性はないことや、回復力を高めることで都市の持続可能性が低下する場合もあることについて論じる。

Article: 2050年までの世界の船舶輸送と生物学的侵略に関する予測

Global forecasts of shipping traffic and biological invasions to 2050

doi: 10.1038/s41893-019-0245-y

天然資源や商品の船舶輸送は離れた地域どうしを結びつけるが、意図した積荷以外のものも移動させてしまうことがある。この研究では、世界的な船舶輸送ネットワークの拡大と気候変動下での侵入生物種の拡散に対する影響をモデル化し、今後数十年間は船舶の移動が大幅に増加し、生物学的侵略リスクが3~20倍になると予測している。

Article: 天然資源の回復力と持続可能性に対するグローバル化の影響

Impact of globalization on the resilience and sustainability of natural resources

doi: 10.1038/s41893-019-0260-z

天然資源の消費者と生産者は、商品の移動が作り出す相互作用のネットワークの中で互いに結びついている。今回の研究により、食品貿易ネットワークの回復力が相互の結びつきに左右されること、そして、世界の食品貿易における結びつきが強まると回復力が低下し、供給ショックなどが起こりやすくなることが明らかになった。

Article: 行為者の多様性と地球規模の変化に対する社会経済システムの回復力

Actors’ diversity and the resilience of social-ecological systems to global change

doi: 10.1038/s41893-019-0236-z

生物多様性は、環境の変化に対する生態系の回復力を高める。今回、スイスの山地農業コミュニティーのデータを初期データとするエージェントベースのモデルを用いた研究から、農家などの行為者の多様性によって経済的変化や気候変動に対する社会環境システムの回復力が高まることが明らかになった。

Article: 集約的畜産施設をマッピングするためのディープラーニング

Deep learning to map concentrated animal feeding operations

doi: 10.1038/s41893-019-0246-x

米国では、機械学習と衛星画像を利用して、他の方法では確認しにくい集約的畜産施設の特定が行われている。これにより、施設が環境法を順守しているかどうかを監視しやすくなる。

Article: 環境に配慮した行動の波及効果に関するメタ分析

Meta-analysis of pro-environmental behaviour spillover

doi: 10.1038/s41893-019-0263-9

文献の調査から、環境に優しい行動が同様の第2の行動の動機となる可能性が高いのは、両方の行動が類似しているときと、第1の行動が内発的動機づけに基づいているときであることがわかった。

Article: 世界的な保全運動は多様ではあるが分裂はしていない

The global conservation movement is diverse but not divided

doi: 10.1038/s41893-019-0267-5

地域と世界の生物多様性は数々の危機に直面しているが、保全活動をどのように進めていくかについては意見の一致をみていない。保全活動が転換点を迎えつつある今、9000人以上の自然保護活動家を対象とする聞き取り調査が行われ、活動家の考え方と、活動家の特徴と考え方との関連について分析が行われた。

Analysis: 持続可能な開発のためのインフラ

Infrastructure for sustainable development

doi: 10.1038/s41893-019-0256-8

インフラシステムへの投資は、未来の世代が行う開発のパターンを固定化する可能性がある。今回、「持続可能な開発目標(SDG)」の17の目標のすべてと169のターゲットの72%の達成にインフラが直接的・間接的な影響を及ぼすことが明らかになった。

Analysis: 米国の洋上風力発電施設の設置計画がネオジムのフローに及ぼす影響

Impact of the establishment of US offshore wind power on neodymium flows

doi: 10.1038/s41893-019-0252-z

大規模な洋上風力タービンは希土類金属を必要とするが、その天然供給量は限られている。今回の研究で、米国が大規模な発電容量を達成するのに必要なネオジムの資材所要量が検討され、解体されたタービンから再利用できる量が推定された。

2019年3月

Review Article: 持続性科学に対する社会代謝研究の寄与

Contributions of sociometabolic research to sustainability science

doi: 10.1038/s41893-019-0225-2

国連の「持続可能な開発目標(SDG)」のようなハイレベルの合意は、社会システムと生物物理システムが本質的に関連していることを認めている。本総説は、この2つのシステムの関連を探る社会代謝研究という研究伝統について解説する。社会代謝研究では、システム科学や関連分野の方法を用いて経済活動の生物物理的基盤を調べる。著者らは最近の研究を具体例として社会代謝研究の長所と短所を論証し、将来の方向性を検討している。

Article: 南極大陸での人類のフットプリントは氷に覆われていない希少な土地に関して自然と競合する

Our footprint on Antarctica competes with nature for rare ice-free land

doi: 10.1038/s41893-019-0237-y

南極大陸は未開の土地とされているが、調査基地の建設と調査活動のフットプリントは、氷で覆われていない比較的狭い地域に偏っている。今回、衛星画像のGISマッピングを用いてこれらの影響の規模を定量化したところ、沿岸部の氷で覆われていないまとまった土地の半分以上に影響を及ぼしていることが明らかになった。

Article: 気候変動下でのハワイ島の在来農業による食料生産の可能性

The potential of indigenous agricultural food production under climate change in Hawaiʻi

doi: 10.1038/s41893-019-0226-1

在来の農業生態系は、工業的農業に比べて食料生産や環境問題とのバランスがうまく取れていることが多いが、現代の食料ニーズを満たすための手法として検討されることはほとんどない。今回、空間モデルと気候シナリオを用いた研究から、かつてハワイ島で行われていた在来農法では、当時からかなり多かった人口の需要も、潜在的には現在の人口の需要も満たせるだけの生産量が得られるが、今世紀末の気候シナリオのうち最も気温が高くなるものでは生産量が低下することがわかった。

Article: 巨大都市デリーの空気質に農村部のバイオマス燃焼の影響

Air quality in megacity Delhi affected by countryside biomass burning

doi: 10.1038/s41893-019-0219-0

大気汚染は人間と生態系の健康に害を与え、産業活動に伴う持続可能な開発を阻害している。デリーの冬の大気汚染は極めて深刻であり、こうした巨大都市は自ら汚染を引き起こしていると考えられていることが多い。今回、大気汚染物質の特徴を識別する新たな方法により、作物残渣や木材を焼く農村部の慣習がデリーの冬の煙霧に大きく寄与していることが明らかになった。

Article: 水資源の制約が米国の発電容量拡大に及ぼす影響

Implications of water constraints on electricity capacity expansion in the United States

doi: 10.1038/s41893-019-0235-0

水資源の制約は、発電容量を拡大する計画に影響を及ぼすことがある。今回の研究により、米国での水資源の制約は、発電コストを増加させて最終用途部門の電化をわずかに抑制する可能性があること、および、水を大量に消費する技術から早期に撤退する動機となる可能性があることが示された。

Analysis: 受粉媒介昆虫の保護のための生物文化的アプローチ

Biocultural approaches to pollinator conservation

doi: 10.1038/s41893-019-0244-z

受粉媒介昆虫は生態系の機能と人間の福祉に不可欠な生物だが、その保護においては現地の生物文化的な展望や慣習がしばしば無視されている。今回、「生物多様性および生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム(IPBES)」のフレームワークを用いて生物文化的慣習が分類され、受粉媒介昆虫の保護において先住民族と地域コミュニティーの役割を支援するための政策が明らかにされた。

Analysis: 変化する世界のバイオモニターとしてのハチミツ

Honey as a biomonitor for a changing world

doi: 10.1038/s41893-019-0243-0

ハチミツをバイオモニターとして利用すれば、都市の重金属汚染物質の発生源と行方を特定することができる。今回、カナダのバンクーバーにある6つの地理的区域から入手したハチミツの鉛同位体組成と微量元素濃度の分析が行われた。その結果、同市のバンクーバー港近くの商業地区にある巣から得られたハチミツは、微量元素濃度が高く、放射壊変起源の鉛同位体が少ないことが明らかになった。

Analysis: 栄養価の高い食品の選択が農業における水利用効率に及ぼす影響

The impact of nutrient-rich food choices on agricultural water-use efficiency

doi: 10.1038/s41893-019-0242-1

食料生産における水利用効率を評価する際には、利用される水の量や食料の生産高だけでなく、栄養素や食生活への影響についても考慮する必要がある。動物性食品と植物性食品では水の需要効率にほとんど差がなく、代替食品ではなく補完食品とした場合に最も効率が良いことがわかった。

Analysis: 「持続可能な開発目標(SDG)」の相互作用ネットワークの所得による差異

Income-based variation in Sustainable Development Goal interaction networks

doi: 10.1038/s41893-019-0231-4

SDGの達成に関連する相互作用ネットワークに関する推定から、貧困と不平等の問題に取り組むことが、他のすべての目標の達成にプラスの効果をもたらすことが明らかになった。

2019年2月

Perspective: 空間を対象とした自然資本管理のための分析的枠組み

An analytical framework for spatially targeted management of natural capital

doi: 10.1038/s41893-019-0223-4

自然資本とそれに関連する生態系サービスを効果的に管理することは困難である。なぜなら、ほとんどの管理活動の影響は広範な環境条件に左右されるからである。ここでは、管理活動によって自然資本を最も増やせる理由や場所を特定できるような分析的枠組みを紹介する。

Perspective: グリーンランドでの砂資源開発への期待と不安

Promises and perils of sand exploitation in Greenland

doi: 10.1038/s41893-018-0218-6

砂や砂利はインフラ改良や海岸保全のための重要な商品となっており、世界的に不足している。本稿ではグリーンランドが砂資源の輸出により経済を多角化する方法と、環境や地元の生活様式に及ぼす潜在的な影響について検討する。

Perspective: 世界から都市へのモデルによりモデル化した将来の米国の陸上貨物輸送が健康と気候に及ぼす影響

Health and climate impacts of future United States land freight modelled with global-to-urban models

doi: 10.1038/s41893-019-0224-3

米国での一人当たりの陸上貨物輸送量はここ数十年で増加している。この論文では、2050年までの予測を提示し、さまざまな政策シナリオ下での米国の貨物のトラック輸送と鉄道輸送が大気汚染物質の排出量、人々の健康、気候に及ぼす影響を検証する。

Article: 石炭火力発電の世界的な排出ホットスポット

Global emission hotspots of coal power generation

doi: 10.1038/s41893-019-0221-6

石炭火力発電は、世界的な温室効果ガスと大気汚染物質排出の一因となっている。今回、石炭火力発電による大気汚染に関するこれまでで最も包括的な解析が行われ、7861基の石炭火力発電ユニットとそれらのサプライチェーンのデータが分析された。排出量が特に大きいのは中国、米国、インド、ドイツ、ロシアであった。また、汚染物質にさらされるリスクが最も高いのはインドと中国であったが、その理由は異なる。

Article: 中国とインドが土地利用管理を通じて世界の緑化を主導

China and India lead in greening of the world through land-use management

doi: 10.1038/s41893-019-0220-7

1980年代初頭からの遠隔測定データでは、地球の緑化が徐々に進んでいることが示されてきた。その理由としては気候変動、CO2の肥沃化効果、土地利用の変化が挙げられている。今回、2000~2017年の衛星データによって、中国とインドの両方で主に土地利用の変化による著しい緑化が進んでいること、そして、中国では森林の成長と農業の集約化による耕作地の緑化の2つが大きな割合を占め、インドでは耕作地の緑化が大半を占めていることがわかった。

Analysis: 食料生産の打撃が土地と海洋に波及する仕組み

Food production shocks across land and sea

doi: 10.1038/s41893-018-0210-1

53年にわたる世界の作物、家畜、水産養殖の生産量と漁獲量の統合評価から、1つの食料部門で生じた打撃が複数の部門に波及する仕組みと打撃のホットスポット地域が示された。

Analysis: 回復力を高めるための目標に基づく水取引による水供給の拡大と多様化

Goal-based water trading expands and diversifies supplies for enhanced resilience

doi: 10.1038/s41893-019-0228-z

世界の水道施設は、水供給のポートフォリオを多様化させることにより水の利用可能量の変動増大の影響を軽減しようとしている。今回シミュレーションから、サンフランシスコ湾岸地帯のオープンな水取引制度に参加するという選択肢により、地域の回復力を高めてコストを削減できることがわかった。

Analysis: リチウムイオン電池の各種リサイクル処理法の検証

Examining different recycling processes for lithium-ion batteries

doi: 10.1038/s41893-019-0222-5

電池のリサイクル処理にはさまざまな方法があるが、環境や経済に及ぼす影響は電池の具体的な化学的性質によって異なる。今回、さまざまな素材の正極を使ったリチウムイオン電池の製造とリサイクルに伴う温室効果ガス排出量、エネルギー投入量、コストの検証が行われた。

2019年1月

Perspective: 人新世を生きるための政策設計

Policy design for the Anthropocene

doi: 10.1038/s41893-018-0194-x

「地球の限界(プラネタリー・バウンダリー)を踏み超えるような活動が引き起こす地球規模の問題は、相互に関連していて、政策立案者の悩みの種になっている。ここでは、人類が地球の生物物理学的限界を超えることなく生きられるようにするための政策設計の複雑さについて考察する。

Perspective: 持続可能で回復力ある農業のために全要素生産性の向上を活用する

Leveraging total factor productivity growth for sustainable and resilient farming

doi: 10.1038/s41893-018-0200-3

1990年代以降の世界の農業生産高は、主として、生産のために投入される労働や土地などの要素の利用効率、すなわち全要素生産性(TFP)を高めるようなイノベーションによって増加してきた。この論文ではそうした現状について論じ、将来のTFPの向上のための技術と生態系を基盤とする2つの経路を提案する。農業システムの持続可能性と回復力に関する将来の研究では、この2つの選択肢を活用すべきである。

Review Article: 都市の自然の価値を抑制する社会的・生態学的・技術的要因

Social-ecological and technological factors moderate the value of urban nature

doi: 10.1038/s41893-018-0202-1

世界の諸都市の生態系サービスの価値はあまり明確になっていない。ここでは、被引用頻度が最も高い10種類の都市生態系サービスに注目し、こうしたサービスの価値と公平な分配を抑制する要因に関する研究を総合的に紹介する。

Brief Communication: 形状選択的ナノスケールリアクターを触媒として用いた廃プラスチックの回収

Recovering waste plastics using shape-selective nano-scale reactors as catalysts

doi: 10.1038/s41893-018-0195-9

新たなナノスケール触媒を用いることで、廃プラスチックを燃料源に転換できる可能性がある。この触媒の表面孔は明確で均一なので、低密度ポリエチレンをわずか1工程でガソリン様の製品に転換することができる。

Brief Communication: 「持続可能な開発目標」の不可分性に関する不完全なビジョン

An imperfect vision of indivisibility in the Sustainable Development Goals

doi: 10.1038/s41893-018-0190-1

「持続可能な開発目標」アジェンダは、相互に関連した1つの枠組みとして提案されており、その実現には政策の一貫性が必要である。この論文では、各目標の関連性にはばらつきがあり、男女平等、平和、ガバナンスに関する懸念が十分に取り入れられていないことを示す。

Article: 種内多様性による農業の持続可能性の強化

Enhanced agricultural sustainability through within-species diversification

doi: 10.1038/s41893-018-0201-2

小規模農家の生産量の増加によって食糧安全保障を維持することは、持続可能性に関する世界的な関心事の1つである。今回、ジャガイモを使った野外実験により、種内多様性が、収量、病害抵抗性、土壌の健全性の改善にプラスの影響を及ぼすことが明らかになった。

Article: 熱帯林のシェアリングかスペアリングかの選択よりも管理戦略の改善の方が効果的

Larger gains from improved management over sparing–sharing for tropical forests

doi: 10.1038/s41893-018-0203-0

熱帯林での生物多様性の保全と木材生産の両方を達成するアプローチとして、それぞれの目的のために土地を分けるランド・スペアリングと1つの土地内で保全と生産を両立させるランド・シェアリングの2つが提案されているが、どちらかを選択するより管理戦略を改善する方がはるかに効果的であることが、モデル研究から明らかになった。

Article: カリブ海での沖合養殖の生態学的・経済学的可能性

The ecological and economic potential for offshore mariculture in the Caribbean

doi: 10.1038/s41893-018-0205-y

沖合養殖では、天然漁業資源を残しながら食糧安全保障と経済発展を促進することができる。今回、モデルに基づいた実験から、カリブ海では天然のスギ(Rachycentron canadum)の世界の漁獲量の約半分に当たる4000万トン以上を、研究対象海域の1.5%未満の広さの海域で生産できることが明らかになった。

Analysis: 米国での屋上太陽光発電の普及に関する人種と民族による相違

Disparities in rooftop photovoltaics deployment in the United States by race and ethnicity

doi: 10.1038/s41893-018-0204-z

米国では屋上太陽光発電(PV)産業が著しい成長を遂げているが、PVの採用における人種的・民族的相違についてはほとんど分かっていない。今回、多数を占める人種と民族によってグループ分けした国勢統計区間の屋上PVの採用についての比較が行われた。その結果、アフリカ系またはスペイン系の米国人が多い国勢統計区では、屋上PVの平均設置数が著しく少ないことが明らかになった。

2018年12月

Perspective: 国連の「持続可能な開発目標(SDG)」に向けた資源ネクサスの展望

Resource nexus perspectives towards the United Nations Sustainable Development Goals

doi: 10.1038/s41893-018-0173-2

天然資源の利用をめぐる論点は、ネクサスの概念から構成されていることが多い。本稿では、生物物理学的側面と人的側面との関連を理解する上でネクサスの概念が重要となる理由を、特にSGDとの関係から論じる。

Perspective: 持続可能性の管理

Management for sustainability

doi: 10.1038/s41893-018-0184-z

人々が集まって作る組織は社会システムであり、生態系や天然資源と同じ方法では管理できない。本稿では社会システム理論と、創発、回復力、規模の概念を用い、さまざまな文脈において組織の持続可能性を追求するための管理原則を提示する。

Review Article: 炭素の回収と利用を目的とした下水処理

Wastewater treatment for carbon capture and utilization

doi: 10.1038/s41893-018-0187-9

現在、下水処理による温室効果ガス排出量は、総排出量の約1.6%を占めている。ここでは、CO2の回収と利用を同時に行うための新たな下水処理経路について分析し、微生物の電気化学的プロセスや光合成的プロセスから得られるいくつかの恩恵を示す。

Brief Communication: 被災地に再建される建物の大型化がもたらす問題

Building back bigger in hurricane strike zones

doi: 10.1038/s41893-018-0185-y

ハリケーンにさらされる米国の沿岸地域は建物の新築や改築に関して多くの規制が設けられているが、衛星画像の分析から、ハリケーン事象後の居住用建築物の土地占有面積が新築と改築の両方で増加していることが明らかになった。つまり、ハリケーンの被害を受けやすい沿岸地域は、災害と家屋が増加する中でレジリエンスを高めるという難題を抱えていることになる。

Article: モジュール式の安価な蒸留による太陽光を利用した受動的で高収率な海水淡水化

Passive solar high-yield seawater desalination by modular and low-cost distillation

doi: 10.1038/s41893-018-0186-x

太陽光を利用した受動的な海水淡水化は、エネルギーを大量に消費する従来の能動的な海水淡水化法の魅力的な代替策となっている。著者らは今回、層状の膜を用いた安価で完全に受動的な多段階式蒸留機で、約31m–2h–1という留出速度を達成したことを報告している。

Article: 所得拡大と気候変動が今世紀半ばの世界的な栄養安全保障に及ぼす影響

Income growth and climate change effects on global nutrition security to mid-century

doi: 10.1038/s41893-018-0192-z

地球環境の変化は、増加する世界人口に十分な栄養を保障するという目標を複雑なものにしている。今回、2050年までのさまざまなシナリオで、一人当たりの食品栄養の利用可能性に関する評価が行われた。その結果、食品と主要栄養素へのアクセスについては経済成長による拡大が気候変動による抑制を上回るが、地域によっては微量栄養素不足が問題となる可能性があることが示された。

Article: 持続可能で健康的な食事のための未来の食品の可能性

The potential of future foods for sustainable and healthy diets

doi: 10.1038/s41893-018-0189-7

人間の食事は、相対的な持続可能性の展望を大きく左右し、健康、土地、水、生物多様性、生活に影響を及ぼす。今回、昆虫や海藻、培養肉といった「未来の食品」を選択することで、現在の動物性食品と比べて環境面での重要な恩恵が得られるだけでなく、人間の健康にとって不可欠な主要な微量栄養素を保障できることが明らかになった。

Analysis: ノーネットロス政策下で実施される生物多様性オフセットの世界的な規模

The global extent of biodiversity offset implementation under no net loss policies

doi: 10.1038/s41893-018-0176-z

生物多様性に関する「ノーネットロス」政策は、経済発展による生物多様性の損失を相殺することを目標としている。今回、こうした生物多様性オフセットの世界的な規模についての評価が行われ、認識されているよりもはるかに広い地域で実施されていることと、ほとんどが小規模で、規制要件のために実施されていることが明らかになった。

Analysis: 複数の「持続可能な開発目標(SDG)」に対する森林残渣由来のジェット燃料の寄与

Contribution of jet fuel from forest residues to multiple Sustainable Development Goals

doi: 10.1038/s41893-018-0181-2

あるライフサイクルアセスメントによると、気候変動を緩和するための航空バイオ燃料は、他の持続可能な目標に悪影響を及ぼす可能性がある。これらの悪影響は、適切な技術とサプライチェーンの管理によって緩和することができる。

Analysis: 1900~2017年の米国本土のハリケーン被害の正規化

Normalized hurricane damage in the continental United States 1900–2017

doi: 10.1038/s41893-018-0165-2

災害による直接的な経済損失の削減は、災害による影響の緩和策の一部となっている。今回、1900年~2017年の米国本土でのハリケーンによる損失を正規化した主要なデータセットが更新された。

2018年11月

Perspective: 水不足を悪化させる貯水池効果

Water shortages worsened by reservoir effects

doi: 10.1038/s41893-018-0159-0

特に乾燥地域では、貯水池は水の供給量を増加させる手段と見なされることが多い。しかし、貯水池の存在が人口増加や経済活動による水の需要を新たに生み出している可能性があり、こうした需要が貯水池の供給可能量を上回れば、その地域は直観に反して干ばつ状態の影響を受けやすくなる。

Review Article: 土地の荒廃と貧困

Land degradation and poverty

doi: 10.1038/s41893-018-0155-4

土地の荒廃と貧困層の生活との関係は複雑であり、重要な経済的、社会的、環境的要因に左右されている。これらの要因は、貧困を減らすための経済成長政策が、限られた成果しか上げられていない一因ともなっている。

Review Article: 抗生物質や農薬に対する感受性と人新世における作用領域

Antibiotic and pesticide susceptibility and the Anthropocene operating space

doi: 10.1038/s41893-018-0164-3

近年、抗菌剤や農薬などの殺生物剤への抵抗性が、人間の健康と食糧生産を損なうようになっている。ここでは、殺生物剤への抵抗性を地球の安全な作用領域内にとどめるために、殺生物剤への感受性を管理し促進するという選択肢について評価を行う。

Article: 高頻度データを用いたグリーンビルディングの持続可能性のより優れた評価法

Better sustainability assessment of green buildings with high-frequency data

doi: 10.1038/s41893-018-0169-y

グリーンビルディング認証を受けた建築物での1時間ごとの高頻度データを用いた電力消費量の評価から、こうした建築物では特にピーク時のエネルギー需要量が減少し、さらなる環境的、経済的利益があることが示された。

Article: アマゾンの地域密着型保全プログラムが複数種の生物にもたらした予想外のコベネフィット

Unintended multispecies co-benefits of an Amazonian community-based conservation programme

doi: 10.1038/s41893-018-0170-5

アマゾン川流域で最大の地域密着型保全イニシアチブの生態学的評価により、対象種以外の種も大きな恩恵を受けていたことが明らかになった。この40年にわたるプロジェクトの対象はオオヨコクビガメである。

Article: ブラジルのアマゾン熱帯雨林の生態系サービスの空間明示型評価

Spatially explicit valuation of the Brazilian Amazon Forest’s Ecosystem Services

doi: 10.1038/s41893-018-0175-0

今回、ブラジルのアマゾン熱帯雨林による主要な生態系サービスの経済的価値についての空間的なマッピングが行われた。また、環境劣化シナリオおよび低インパクト伐採シナリオでのこれらの価値の変化についても評価が行われた。

Article: 森林法改正後にブラジルのアマゾン熱帯雨林で合法な森林伐採が増加する可能性

Potential increase of legal deforestation in Brazilian Amazon after Forest Act revision

doi: 10.1038/s41893-018-0171-4

ブラジルの森林法の改正条項により、州全体で保護された公有地の割合が65%に達した場合には私有地の森林を伐採できる範囲が広がることになり、この条件を満たす可能性が高い一部の州では、さらに650~1500万ヘクタールの私有地の森林伐採が合法化される可能性がある。

Article: 繰り返す生態系撹乱に対する復元力のフロー・キックダイナミクスを用いた定量化

Quantifying resilience to recurrent ecosystem disturbances using flow–kick dynamics

doi: 10.1038/s41893-018-0168-z

持続可能性は自然システム、社会システム、工学的システムの復元力に左右される。今回の理論的研究では、繰り返す撹乱に対する復元力を定量化し、衝撃の大きさ(キック)と回復の大きさ(フロー)が、システムを望ましい状態に保つ上でどのように寄与しているかに関する理解を統合する。

Article: 全世界で回収可能な人間と動物の糞便バイオマス量の推定

Estimation of global recoverable human and animal faecal biomass

doi: 10.1038/s41893-018-0167-0

人間と動物の糞便は、世界の公衆衛生への脅威であると同時に回収するべき資源でもある。今回、2003年から2030年に予想される回収可能な糞便量と、それに関連する問題に関する世界規模での分析が初めて行われた。家畜による糞便の生産量は人間による糞便の生産量の約4倍であり、現場でのより良い管理法が強く必要とされている。

Article: バイオ燃料がもたらす恩恵を最適化するための高多様性バイオマス生産の持続可能な集約化

Sustainable intensification of high-diversity biomass production for optimal biofuel benefits

doi: 10.1038/s41893-018-0166-1

現在生息している草や藻類などの生物から生産されるバイオ燃料は、地質学的過程を経て生産された燃料を補っている。今回、草原の多年生植物の生産を中程度に集約化することで、そこから得られるバイオ燃料がもたらす土壌炭素貯蔵量の増加、温室効果ガスの削減、燃料生産といった恩恵を最適化できることが明らかになった。

Article: 複数の環境目標を達成するために中国の石炭火力発電所を管理する

Managing China’s coal power plants to address multiple environmental objectives

doi: 10.1038/s41893-018-0174-1

中国の石炭を主体とした電力システムは、大量の炭素排出、地域の大気汚染、水ストレスの一因となっている。本論文では、現在の環境規制と大気汚染物質排出量や水の価格変動によって石炭戦略を最適化する場合の、中国の2030年までの3種類の電力システム開発シナリオを提示する。

Article: 含水バイオ廃棄物の水熱液化によって生産される再生可能ディーゼル燃料ブレンドストック

Renewable diesel blendstocks produced by hydrothermal liquefaction of wet biowaste

doi: 10.1038/s41893-018-0172-3

食品加工や動物の糞尿に由来する含水バイオ廃棄物は、水熱液化を用いてバイオ原油に変換することができる。今回、蒸留とエステル化を組み合わせてバイオ原油の品質をディーゼル燃料ブレンドストックまで高め、それを用いたエンジン試験が行われた。

Analysis: 暗号通貨マイニングのエネルギーコストと炭素コストの定量化

Quantification of energy and carbon costs for mining cryptocurrencies

doi: 10.1038/s41893-018-0152-7

暗号通貨マイニングでは、コンピューターでブロックチェーンを検証し新たな通貨を作り出すために莫大なエネルギー消費が必要となる。今回、1ドルの価値を作り出すのに必要なエネルギー量と暗号通貨マイニングに直接起因する炭素排出量の観点から、複数の暗号通貨マイニングと金属採掘の比較が行われた。

2018年10月

Perspective: 科学と自然体験

Science and the experience of nature

doi: 10.1038/s41893-018-0124-y

持続可能性をめぐる議論は、底の浅いものに留まり、必要な変化を実現できない恐れがある。本稿では、超学際的研究へのコミットメントだけでなく、人間と自然界の関係を解明する科学の力と、その弱点に対するより深い理解の必要性について論じる。

Perspective: 窒素汚染を軽減するための技術強制型規制

A technology-forcing approach to reduce nitrogen pollution

doi: 10.1038/s41893-018-0143-8

工業的農業は窒素汚染を悪化させ、世界的に重大な問題にしている。今回著者たちは、農家による高効率肥料の採用を促進するため、企業別平均燃費基準方式のロジックを応用することを提案する。

Review Article: ソーシャルメディアデータを都市の持続可能性研究に役立てる

Social-media data for urban sustainability

doi: 10.1038/s41893-018-0153-6

本総説では、都市レベルでの持続可能性の研究や実践にソーシャルメディアデータを利用する際の課題と機会について論じ、将来の研究にとって有益な方向性を明らかにする。

Article: アフリカのサバンナでの家畜と野生動物の共存の結果

Consequences of integrating livestock and wildlife in an African savanna

doi: 10.1038/s41893-018-0149-2

ほとんどの野生動物は保護区外で生息しているため、人間との間でニーズの衝突が生じる可能性がある。今回、東アフリカのサバンナで野生動物の管理と家畜の管理の間の潜在的なトレードオフの評価が行われ、両者を共存させることで生態系と経済に恩恵をもたらす可能性が見いだされた。

Article: 放し飼い地鶏の持続可能な生産において地域的適応が果たす役割

The role of local adaptation in sustainable production of village chickens

doi: 10.1038/s41893-018-0150-9

地鶏の放し飼いは小規模農家のコミュニティーでは一般的に行われているが、ニワトリの死亡率は高い。今回、エチオピアの2つの地域を比較したところ、形質や寄生虫数といった固有の適応は、人間の選択によって形成されたと思われる明確な遺伝子プールを反映していることがわかった。この結果は、地鶏の放し飼いに対する持続可能な介入方法は、その地域に合わせたものにすべきであることを示している。

Article: 環境モニタリングのための機械学習

Machine learning for environmental monitoring

doi: 10.1038/s41893-018-0142-9

ビッグデータを用いる機械学習は、環境法に関するモニタリングを強化することができる。この手法を米国の水質浄化法に適用すれば、規制を遵守しない施設が公的機関の調査を受ける可能性を7倍に高めるのに役立つ可能性がある。

Article: アフリカ・サブサハラ地域での停電が持続可能性に及ぼす影響

Sustainability implications of electricity outages in sub-Saharan Africa

doi: 10.1038/s41893-018-0151-8

アフリカ・サブサハラ地域で電力供給を受けている場所では、しばしば停電が発生するため、予備のディーゼル発電機の使用が増加することが多い。今回、こうした発電機の使用によって生じる排出ガス、消費者の費用負担、化石エネルギー消費量が推定された。

Analysis: 中国のレアアース供給を環境に優しいものにする道筋

Pathways for greening the supply of rare earth elements in China

doi: 10.1038/s41893-018-0154-5

レアアースの最大の生産国である中国では、レアアース生産の正味の環境コストが年間約150億ドルであると推定されている。複数のシナリオの中で環境に与える影響を最も軽減できるのは、違法採掘の問題に対処することであることが示された。

2018年9月

Perspective: 国際環境レジームの有効性を評価するための研究戦略

Research strategies to assess the effectiveness of international environmental regimes

doi: 10.1038/s41893-018-0132-y

Review Article: 世界の持続可能な開発のためのネクサスアプローチ

Nexus approaches to global sustainable development

doi: 10.1038/s41893-018-0135-8

より少ない資源を使って人々に食料を行き渡らせることなどの持続可能性の課題には、食料、水、エネルギーといった多数の問題のネクサス(関係)における課題が含まれている。ここでは、こうしたネクサスアプローチについて検討し、持続可能な開発の課題への利用法について調査し、実例について議論し、系統的な方法と将来の方向性についての提案を行う。

Article: 高収量農業が環境にもたらす損害と利益

The environmental costs and benefits of high-yield farming

doi: 10.1038/s41893-018-0138-5

高収量農業システムは、非耕作地を農業以外の用途(自然保護など)のために保全できる可能性があるが、温室効果ガスの排出や土壌の侵食など、環境に悪影響を及ぼす可能性についての懸念も生じている。本論文では、こうした影響は生産単位当たりで測定すべきだと主張し、そのような見方をすれば、土地利用効率が高い一部のシステムは低収量の代替法に比べて影響が小さいことを明らかにする。

Article: 水不足に関する予測の不確実性を踏まえた世界の水問題の評価

Global assessment of water challenges under uncertainty in water scarcity projections

doi: 10.1038/s41893-018-0134-9

気候変動下で水不足問題への介入策を設計することは、水の利用可能量に関する予測の不確実性が大きいために困難である。今回、水不足状況の予測に伴う不確実性の範囲の変化が特定され、政策決定を支援する総合的な意思決定の枠組みが提案された。

Analysis: コンゴ民主共和国におけるコバルトの人力小規模採掘の持続可能性

Sustainability of artisanal mining of cobalt in DR Congo

doi: 10.1038/s41893-018-0139-4

蓄電池に使われるコバルトは、世界の供給量の半分がコンゴ民主共和国のある地域で産出されている。今回、現地の人力小規模採掘の持続可能性について評価が行われ、コバルトに曝露された地域住民、特に子供たちの血中と尿中から、対照群よりはるかに高濃度のコバルトが検出された。

Analysis: 中国の天然ガス産業における空気質・炭素・水の相乗効果とトレードオフ

Air quality–carbon–water synergies and trade-offs in China’s natural gas industry

doi: 10.1038/s41893-018-0136-7

2020年の中国における天然ガスの6種類の供給源と、最終用途を石炭からガスに置き換える3種類の戦略に注目した研究で、石炭を原料とする合成天然ガス以外のガスで石炭を代替することにより、通常は空気質・炭素・水のコベネフィット(共通便益)が得られるが、改善と同じ規模の空気質と水のトレードオフを伴うことが示された。

Analysis: 住宅での固形燃料の使用による極端な大気汚染

Extreme air pollution from residential solid fuel burning

doi: 10.1038/s41893-018-0125-x

極端な大気汚染と気候変動の原因となる粒子状物質の発生源を解明することは、国民の福祉を守る適切な政策の設計にとって極めて重要である。論文では、2016年11月と2017年1月にダブリンで直径1µm未満の粒子状物質が異常な高濃度で観察されたことと、その原因が、「緩徐再生可能燃料」として奨励されることの多い泥炭や木材の住宅での燃焼による排出にあることを示す。

Analysis: ヨーロッパの国々の地域レベルの地理学的実体におけるさまざまな食事のウォーターフットプリント

The water footprint of different diets within European sub-national geographical entities

doi: 10.1038/s41893-018-0133-x

フランス、ドイツ、英国の食料消費量にどのくらいの水が組み込まれているかを調べたフットプリント解析から、ウォーターフットプリントの地理的な差が見いだされ、さまざまな食事が水保全にどのように影響するかが示された。

Analysis: ハード面での適応対策は長期的には高潮と津波災害への脆弱性を高める可能性がある

Hard-adaptive measures can increase vulnerability to storm surge and tsunami hazards over time

doi: 10.1038/s41893-018-0137-6

津波リスクに対する沿岸地域の適応対策は、住民に誤った安心感を与え、脆弱性を高めてしまうことがある。防波堤のようなハード面の適応プロジェクトは、人間の行動とフィードバックループを評価した上で考慮する必要がある。

2018年8月

Perspective: 持続可能な水産物市場の発展と将来

Evolution and future of the sustainable seafood market

doi: 10.1038/s41893-018-0115-z

持続可能な水産物調達に関する数十年にわたる取り組みでは、認証制度や消費者へのシグナリングにおける第三者のイニシアチブを強調する「変革の理論」が重視されてきた。この理論の進展と将来の可能性から、漁場の管理や複数の行為者の調整に関する問題が見えてくる。

Review Article: 気候変動下における農業による窒素損失への取り組み

Addressing agricultural nitrogen losses in a changing climate

doi: 10.1038/s41893-018-0106-0

気候変動と集約的農業管理法の相互作用は農業による窒素損失を増大させる。ここでは、農業による窒素損失の気候変動への応答の根底にある過程を分析し、将来の窒素損失の抑制に役立ついくつかの原則を提案するとともに、その実現に影響を及ぼす可能性のある経済的要因について述べる。

Brief Communication: 地球の半分を保全しながら世界に食料を供給するという課題

The challenge of feeding the world while conserving half the planet

doi: 10.1038/s41893-018-0119-8

生息地や生物多様性の減少が続いていることを受け、主だった環境保護論者たちは地球の半分を自然のために保全することを提案している。今回、地球の半分の保全と食料生産とのトレードオフの評価が行われ、保全によって、耕作地、牧草地、作物から得られるカロリーが失われることと、これらの損失が保全戦略に応じて変動することが明らかになった。

Article: 持続可能な農業のメンタルモデルの構造

The structure of mental models of sustainable agriculture

doi: 10.1038/s41893-018-0116-y

認知マッピングでは、複雑系についての人々の考え方を明らかにし、相互依存性の理解に関する仮説検定を行うことができる。今回の研究から、人々の教育と経験が、持続可能な農業について考える際のフィードバックループや間接的効果などの微妙な形の複雑系思考と関連していることが明らかになった。

Article: 海洋保護区での密漁に対する漁師の自発的監視と規制執行の取り組み

Addressing poaching in marine protected areas through voluntary surveillance and enforcement

doi: 10.1038/s41893-018-0117-x

規制の執行に限界がある海洋保護区(MPA)では、密漁によってその実効性が損なわれている。今回、MPA周辺の漁師の調査が行われ、約半数の漁師が密漁を目撃していたが、衝突を避けたい、自分の責務ではない、密漁は生存戦略であるなどの考えから、その大半が見て見ぬ振りをしていたことがわかった。

Article: 6大陸の都市人口由来の栄養素の農業への再循環

Recirculation of human-derived nutrients from cities to agriculture across six continents

doi: 10.1038/s41893-018-0118-9

人間の排泄物に含まれる栄養素のほとんどを回収することができれば、世界の合成肥料の使用量を大幅に相殺し、循環経済の強化によって食糧安全保障の目標を推進することができる。今回、世界最大規模の56の都市で、近隣の農業ニーズと都市で生じる栄養素の地産地消について解析したところ、耕作地の密度が高く、栄養集約型の作物を栽培し、都市部がコンパクトにまとまっている場所では、人間由来の栄養素を農業で再利用することが可能かつ簡便であることがわかった。

Analysis: ヨーロッパの脱炭素化のために再生可能エネルギー用資材への関税の引き下げを

Tariff reduction on renewables inputs for European decarbonization

doi: 10.1038/s41893-018-0113-1

計量経済学モデルによる解析から、再生エネルギーの生産の鍵となる資材の関税の撤廃が、ヨーロッパでの炭素排出量削減に大きな影響を及ぼす可能性があることが示された。

Analysis: 持続可能な農業集約化を実現するための農業システムの再設計に対する総合的評価

Global assessment of agricultural system redesign for sustainable intensification

doi: 10.1038/s41893-018-0114-0

農業生産の集約化は、環境コストをもたらすことが多い。今回、農業システムの再設計に向けた進展の評価が行われ、世界の農場の29%が、世界の農地の9%において、持続可能な農業生産の集約化に関する7種類の方法を実践していると見積もられた。

2018年7月

Perspective: 南半球の発展途上国の都市化と地球の持続可能性の危機的状況

The urban south and the predicament of global sustainability

doi: 10.1038/s41893-018-0101-5

都市化における持続可能性の問題と、それらを改善する機会のほとんどは、「グローバル・サウス」と呼ばれる南半球の発展途上国にある。この論文では、先進国と発展途上国の都市問題がどのくらい異なるのかを示す。また、グローバル・サウスの都市研究がより主導的な役割を果たせるように、世界の都市研究体制を修正していく方法を提案する。

Perspective: アジェンダ2030のためのカーボンプライシングによる国内資源の動員

Mobilizing domestic resources for the Agenda 2030 via carbon pricing

doi: 10.1038/s41893-018-0083-3

化石燃料に補助金を出す制度から排出される炭素に価格をつけるカーボンプライシング制度に移行すれば、「持続可能な開発目標(SDG)」への取り組みを進めるための財源を創出することができる。この論文では、民間の財源が乏しい多くの低所得国では、SDGに資金を提供するための政策上の選択肢として、炭素税による収入が特に魅力的なものとなる可能性が示された。

Brief Communication: カリフォルニア州でのシェードボールを用いた水保全のウォーターフットプリント

The water footprint of water conservation using shade balls in California

doi: 10.1038/s41893-018-0092-2

複雑な問題に対する技術的解決策を性急に実施すると、予期せぬ影響が生じることがある。近年のカリフォルニア州の干ばつを受け、水の蒸発を防ぐためにロサンゼルスの貯水池にシェードボールが投入されたが、シェードボールのウォーターフットプリントの評価は、この水保全策の持続可能性に疑問を投げかけるものとなった。

Article: 有機農業の有害生物防除効果を示す証拠

Evidence that organic farming promotes pest control

doi: 10.1038/s41893-018-0102-4

合成農薬を使わずに作物を生産する有機農業の有害生物に対する防御効果は明らかになっていない。今回の研究から、有機農業は全体的には有害生物防除を促進するが、その効果は有害生物の種類によってまちまちであり、慣行農業と比べた蔓延度は病原体では低く、害獣では同等で、雑草では高いことが明らかになった。

Analysis: 先住民族の土地が保全にとって世界的に重要であることを示す空間的概観

A spatial overview of the global importance of Indigenous lands for conservation

doi: 10.1038/s41893-018-0100-6

先住民族による土地の管理と所有は保全戦略の重要な要素だが、その情報が集約されたことはなかった。今回、地球規模のデータがまとめられ、先住民族は世界の陸地の4分の1について保有権を持っているか、それらを管理しており、そこには保護地域と手つかずの生態系の40%が含まれていることが示された。

2018年6月

Review Article: 農業集約化が社会と生態系に及ぼす影響

Social-ecological outcomes of agricultural intensification

doi: 10.1038/s41893-018-0070-8

農業集約化が人間の幸福と生態系サービスに及ぼす影響に関する研究を包括的に検討したところ、以前の土地利用方法、集約化の種類、具体的にどのような項目を測定するかなどによって、まちまちな評価となることが示された。

Article: ヨーロッパの歴史的飢饉のタイミングと原因

The timing and causes of famines in Europe

doi: 10.1038/s41893-018-0078-0

飢饉を引き起こす生態学的・社会的決定要因と、その深刻さとタイミングを特定するため、1300年から1850年までに英国、フランス、イタリアで起きた飢饉の分析が行われた。その結果、産業革命以前には人口密度と食料生産に関するマルサスの主張が正しく、飢饉は気象事象によって引き起こされていたことがわかった。飢饉が「人為的」な事象になったのは1710年以降であった。

Article: ロサンゼルス広域圏の水供給の経済的価値

The economic value of local water supplies in Los Angeles

doi: 10.1038/s41893-018-0068-2

ロサンゼルス広域圏の水供給の経済的側面に関して、輸入水、地下水、再生水、雨水の回収といった給水源の「全サイクル」コストに基づく大規模な経済的分析が行われた。研究に用いられたのは都市の水問題研究の最新のモデルと枠組みであり、ロサンゼルス以外の都市にも応用できる。

Analysis: 養殖用の餌魚の生態学的限界を回避する

Avoiding the ecological limits of forage fish for fed aquaculture

doi: 10.1038/s41893-018-0077-1

水産物は養殖物が天然物を上回りつつあるが、重要な栄養素を補うため、養殖魚には野生の餌魚が与えられている。今回、家畜と非肉食性養殖魚種の飼料からこうした餌魚を除外し、中国での餌魚の使用量を抑制することが、将来の餌魚の個体数維持に役立つと考えられることがわかった。

Analysis: 中国での持続可能な農業集約化の進展を阻む土地利用の変化

Progress towards sustainable intensification in China challenged by land-use change

doi: 10.1038/s41893-018-0076-2

中国の農業生産高は急速に増加しているが、環境に与える影響は明らかになっていない。今回、環境への影響は大きくなっているものの、農業管理方法の改善による生産量の増加に比べてかなりゆっくりしていることがわかった。しかし近年、中国国内では耕作地の場所が変化していて、こうした移動が持続可能な農業集約化の進展を阻害する可能性があることがわかった。

Analysis: 食品以外の商品の貿易と世界的な富栄養化への影響

Trade and the role of non-food commodities for global eutrophication

doi: 10.1038/s41893-018-0079-z

農業は水域への窒素とリンの供給過剰による富栄養化の主要因であるため、食料消費が環境に及ぼす影響に対しては多大な関心が寄せられてきた。しかし、食品以外の商品の消費の影響についてはほとんどわかっていない。今回の研究により、2011年には世界の海水と淡水の富栄養化に及ぼす影響の3分の1以上を食品以外の商品への最終需要が占めており、2000年から28%増加していたことが示された。

2018年5月

Perspective: 持続可能な行動への規範的動機の文化進化

Cultural evolution of normative motivations for sustainable behaviour

doi: 10.1038/s41893-018-0061-9

文化進化論は、外部から強制された規範がどのようにして内面化され、持続可能な行動への内発的動機づけとなるのかを説明するのに役立つ。この知見は、行動を変化させるための介入方法の開発に有用である。

Review Article: 合理性を超え持続可能性を考慮した工学的設計

Beyond rationality in engineering design for sustainability

doi: 10.1038/s41893-018-0054-8

自然界の制約の中で人間の幸福を長期的に確保するには、持続可能性を考慮した設計が必要である。ここでは、そうした設計が認知バイアスによってどの程度まで制限または促進されうるかを分析する。また、持続可能性を達成するための新たな手法として、エンジニアの意思決定環境を変化させる可能性についても提案する。

Article: シェードツリーによる被覆率が低・中程度の農地林での気候変動に対応した持続的農業

Climate-smart sustainable agriculture in low-to-intermediate shade agroforests

doi: 10.1038/s41893-018-0062-8

農地林では作物生産と生態系サービスの供給を組み合わせることができるが、どのように実施すればコストと利益のバランスを保てるのかはまだよく分かっていない。今回、西アフリカのカカオ農地林では、シェードツリーによる被覆率が低・中程度なら、作物の生産量を損なうことなく生物多様性の保全と気候変動への対応についても有益な結果がもたらされることが示された。

Article: 気候変動緩和経路モデルの土地利用の変化速度には前例がない

Unprecedented rates of land-use transformation in modelled climate change mitigation pathways

doi: 10.1038/s41893-018-0063-7

気温上昇を2°C以内に抑えるための各種モデルは、森林再生などの土地利用変化の実施により炭素貯蔵を増やすことを前提としている。これらのモデルは1年当たり880万ha以上の耕作地の増加を仮定しており、なかには大規模な森林再生だけでなく植林まで仮定するモデルもあることがわかった。

Article: 世界的な解析で特定された泥炭地由来の飲料水利用のホットスポット

Hotspots of peatland-derived potable water use identified by global analysis

doi: 10.1038/s41893-018-0064-6

泥炭地は飲料水の供給源の1つだが、そのほとんどが主要な市街地域から遠く離れているため、地球および地域的な規模での泥炭地の飲料水資源への寄与についてはほとんどわかっていない。今回、泥炭地、人口、水路測量学データが解析され、泥炭地が水供給に不可欠となっているホットスポットが特定された。

Analysis: 中国での非合法養子縁組の児童売買ネットワーク

Child-trafficking networks of illegal adoption in China

doi: 10.1038/s41893-018-0065-5

中国での非合法養子縁組に関する2万件以上の報告についてソーシャルネットワーク解析を行なったところ、児童売買で最も重要な都市、省、経路が明らかになった。そのうちの4つの都市から、児童売買ネットワークの80%以上に到達できることもわかった。

2018年4月

Review Article: 世界の水問題への取り組みにおけるナノテクノロジーの役割

The role of nanotechnology in tackling global water challenges

doi: 10.1038/s41893-018-0046-8

最近の技術的進歩にも関わらず、すべての人に安全できれいな水を十分かつ持続的に供給することは依然として困難である。ここでは、水処理システムの持続可能性を高める上でのナノ材料の潜在的応用性と、それを阻む要因について評価する。

Article: 米国の石炭採掘が河川の生物多様性に及ぼす影響と現行規制の評価

Impact of coal mining on stream biodiversity in the US and its regulatory implications

doi: 10.1038/s41893-018-0048-6

石炭は重要なエネルギー資源だが、石炭の利用は地域の大気の質と地球の気候に影響を及ぼす。今回、石炭採掘によって河川の動物の多様性と生息数が減少することと、こうした影響が鉱山跡地の環境再生後も持続することが示された。

Article: 共有資源の管理における協力には時間と熟考が必要

Slow and deliberate cooperation in the commons

doi: 10.1038/s41893-018-0050-z

共同で保持されている天然資源の持続可能な管理をめぐる意思決定の質は時間的制約によって低下することが、実験行動学的手法によって示された。

Article: 大規模な環境NGO内でイノベーションを普及させる非公式ネットワークの境界連結者たち

Innovation diffusion within large environmental NGOs through informal network agents

doi: 10.1038/s41893-018-0045-9

大規模な環境NGOでのネットワーク実験から、参加するプロジェクトの数と種類が多いスタッフに新たな実践方法に関する情報を与えた場合、イノベーションが普及する可能性が4倍になることがわかった。

Analysis: 地球の淡水の動向を追跡する

Tracking the pulse of the Earth’s fresh waters

doi: 10.1038/s41893-018-0047-7

生態系と社会を支える淡水資源を確実に監視することは重要である。今回、水流測定データの報告件数が1979年から世界的に減少していることと、こうした監視の変化が米国の多くの河川流域を脅かしていることが判明した。

2018年3月

Article: 中国の食生活と栄養価の急速な変化が環境に与える影響

The environmental impacts of rapidly changing diets and their nutritional quality in China

doi: 10.1038/s41893-018-0035-y

1997年から2011年にかけての中国の食生活の変化と、この変化が環境に与える影響に関する分析から、農村部と都市部では明白に異なる傾向が見られることと、主に食肉消費量の増加によって、温室効果ガス排出量、水消費量、土地収用が全体的に増加していることが明らかになった。

Article: 共有林保全のための支払いに関する実験的証拠

Experimental evidence on payments for forest commons conservation

doi: 10.1038/s41893-018-0034-z

5カ国での形成フィールド実験から、「生態系サービスへの支払い(PES)」によって森林保全が強化されること、コミュニケーションが支払いによる効果を促進すること、プラスの影響は支払いそのものよりも長く持続することが示された。

Analysis: 「生態系サービスへの支払い」の世界的な状況と傾向

The global status and trends of Payments for Ecosystem Services

doi: 10.1038/s41893-018-0033-0

世界の「生態系サービスへの支払い(PES)」に関する550以上のプログラムのデータを、水、森林および土地利用炭素、生物多様性についてグループ分けしたものを用いて、この政策手段の傾向と現状の評価が行われた。

Analysis: 自然のサービスへの支払いの根本方針と実践との乖離

From principles to practice in paying for nature’s services

doi: 10.1038/s41893-018-0036-x

「環境サービスへの支払い(PES)」に関して生成された世界のデータから、PESの理論的方針、特にコンディショナリティに関する方針が部分的にしか実践されていないせいで、その成果が期待を下回っていることが明らかになった。

2018年2月

Article: 人類は地球の限界内で豊かに生活できるか

A good life for all within planetary boundaries

doi: 10.1038/s41893-018-0021-4

人類が地球の生物物理的な限界内で高い生活水準を実現することは重要な課題である。今回、人間の基本的ニーズを満たすための資源利用を定量し、それを150カ国以上の国々についてダウンスケールした「プラネタリー・バウンダリー(地球の限界)」と比較したところ、国民の基本的ニーズを持続的に満たす国は存在しないことが判明した。

Article: メコン川での戦略的なダム計画による水力発電と土砂連続性とのトレードオフの改善

Improved trade-offs of hydropower and sand connectivity by strategic dam planning in the Mekong

doi: 10.1038/s41893-018-0022-3

メコン川流域のダムは、河川プロセスへの影響を考慮することなく建設されている。今回、メコン川下流の戦略的なダム計画により、堆積する流送土砂を21%に抑えながら、流域の水力発電ポテンシャルの68%を開発できる可能性が示された。

Article: 大規模生産が可能な放射冷却生地用のナノ多孔性ポリエチレンマイクロファイバー

Nanoporous polyethylene microfibres for large-scale radiative cooling fabric

doi: 10.1038/s41893-018-0023-2

冷却効果のある布地などの省エネイノベーションは持続可能な開発の役に立つ。今回、均一かつ連続的で、木綿のように柔らかい、衣類用のナノ多孔性ポリエチレンマイクロファイバーの大規模な押出成形について報告された。この布地は人間の皮膚温を2.3℃低下させ、屋内の冷房に必要なエネルギーを20%以上節減することができる。

2018年1月

Perspective: 環境政策における「ノーネットロス」の多義性

The many meanings of no net loss in environmental policy

doi: 10.1038/s41893-017-0007-7

湿地、生物多様性、土地生産力などの自然資本については、全体のプラスマイナスをゼロにする「ノーネットロス」が1つの政策目標になっている。今回の研究は、ノーネットロス政策の意図する効果が、参照シナリオによって大きく異なる場合があることを明示している。

Brief Communication: コストが小さい持続可能な行動には「いい気分になること」への期待が関連している

Warm glow is associated with low- but not high-cost sustainable behaviour

doi: 10.1038/s41893-017-0001-0

21種類の行動に注目した2波調査から、「いい気分になること」への期待が「環境に優しい行動」と4週間にわたって正の相関を示すことが明らかにされた。この関係は、環境に優しい選択のコストが小さい場合により強くなることがわかった。

Brief Communication: 持続可能な消費に対する障害は外国語の使用によって緩和される

Barriers to sustainable consumption attenuated by foreign language use

doi: 10.1038/s41893-017-0005-9

再生水、人工肉、昆虫食品などの持続可能な製品は、嫌悪感が選択の障害となっている。今回、こうした製品の説明に外国語を用いることで、消費意欲と実際の消費の双方が増加することがわかった。

Brief Communication: 貿易と食品栄養素の世界的分配の公平性

Trade and the equitability of global food nutrient distribution

doi: 10.1038/s41893-017-0008-6

バランスの取れた食事は人間の健康にとって不可欠であり、「持続可能な開発目標」にも盛り込まれている。研究から、食品栄養素が全世界で公平に分配されるためには貿易が役に立ち、国際貿易政策が大きな影響を及ぼすことがわかった。

Article: 被災地の復興の社会経済的影響

Socio-economic consequences of post-disaster reconstruction in hazard-exposed areas

doi: 10.1038/s41893-017-0002-z

災害をきっかけに人々の居住希望地が変化すると、復興によって社会的脆弱性が高まることがある。インドネシアの津波被災地では、多くの人々がより安全な地域に移住しようとしたため、内陸部の住宅費が上昇し、貧困層が海岸付近に住むようになったことが明らかになった。

Article: 中国のカルスト地域での生態工学プロジェクトによる植生の生育および炭素貯蔵の増加

Increased vegetation growth and carbon stock in China karst via ecological engineering

doi: 10.1038/s41893-017-0004-x

中国は2000年から、南西部のベトナム、ラオス、ミャンマーとの国境地域で、広大な土壌侵食地域の緑化を試みている。今回、植生が再び成長して炭素を貯蔵していることが明らかになり、この生態工学プロジェクトが砂漠化に対して有効であることがわかった。

Article: 気候変動と都市の成長が都市部と農業地域に水をめぐる競合を生じる

Water competition between cities and agriculture driven by climate change and urban growth

doi: 10.1038/s41893-017-0006-8

人口の増加と気候変動による水の供給量の変化は、全世界の都市に影響を及ぼす。今回調査が行われた都市の27%では2050年までに水の需要量が利用可能量を上回り、その他の多くの都市の水需要が農業と競合する可能性があることがわかった。

Analysis: 汚染物質排出量が特に多い発電所ユニットからの選択的な排出量削減

Targeted emission reductions from global super-polluting power plant units

doi: 10.1038/s41893-017-0003-y

2010年に世界で稼働していた3万カ所以上の化石燃料発電所について発電所ユニット単位での大気汚染物質排出目録を作成した結果、世界の発電容量の0.8%に相当する石炭火力発電所の廃炉または排出抑制技術の導入によって、石炭火力発電所からのPM2.5の排出量を最大で14.2%削減できることがわかった。

Analysis: コンクリート生産の急増が世界の水資源に及ぼす影響

Impacts of booming concrete production on water resources worldwide

doi: 10.1038/s41893-017-0009-5

コンクリートの生産が水に及ぼす影響についてはほとんどわかっていない。今回、2012年時点での世界的な影響を定量化し、それをもとに2050年での影響を推定した。さらに、再生可能な水資源の利用可能性に基づいて、どの地域での影響がより深刻になるかを評価した。

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