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ウェッブ宇宙望遠鏡が捉えた最初期の銀河6選

ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)を運用する宇宙望遠鏡科学研究所(米国メリーランド州ボルティモア)に置かれたJWSTの模型。 Credit: Karl Merton Ferron/Baltimore Sun/Tribune News Service via Getty

2023年7月、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)を使ってはるか遠方の宇宙を大規模に観測した結果が公開された。この観測では、ビッグバンにより宇宙が誕生してから6億5000万年以内という、これまでで最も早い時代の銀河がいくつも特定された。今回の発見は天文学者たちを驚かせ、恒星や銀河が、誰も予想していなかったほど早い時期から形成され、進化していたことを明らかにした。

「JWST Advanced Deep Extragalactic Survey(JADES:JWST先端深宇宙銀河系外サーベイ)」と呼ばれるこのプロジェクトでは、2004年にハッブル宇宙望遠鏡が11日間の観測により数千個の銀河を発見したことで有名になった「ろ座」をはじめとするいくつかの領域を観測した。ハッブル宇宙望遠鏡が主に可視光で観測を行うのに対し、JWSTは主に赤外線で観測を行うため、極端に遠方の銀河を探すのに適している(2022年2月号「ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡、宇宙へ」参照)。極端に遠方の銀河から来る光は宇宙の膨張によって波長が延び、赤い方にずれて見えるからである(この現象は赤方偏移と呼ばれる)。

この観測では、宇宙が誕生してから6億5000万年以内という、これまでで最も早い時代の銀河がいくつも特定された

極端に遠方の銀河からの光は非常に長い距離を旅してくるため、私たちは138億年前のビッグバンから間もない時期の光(天体の姿)を見ていることになる。天文学者は、天体の赤方偏移を利用して地球からの距離を測る。天体の赤方偏移が大きいほど、地球からの距離は大きくなる。

Credit: L TO R: JADES COLLAB., B.E. ROBERTSON ET AL./NATURE ASTRON.; JADES COLLAB., S. TACCHELLA ET AL./ARXIV (CC BY 4.0); JADES COLLAB., D. J. EISENSTEIN ET AL./ARXIV (CC BY 4.0)

Credit: L TO R: JADES COLLAB.; JADES COLLAB., W. M. BAKER ET AL./ARXIV (CC BY 4.0); JADES COLLABORATION, K. N. HAINLINE ET AL./ARXIV (CC BY 4.0)

2021年にJWSTが打ち上げられるまで、赤方偏移が8以上の銀河は数十個しか発見されていなかった。JADESは今回、赤方偏移8以上の銀河を717個も発見した(K. N. Hainline et al. Preprint at https://arxiv.org/abs/2306.02468; 2023)。Natureはこの膨大なデータを理解するため、天文学者たちにお気に入りの銀河をいくつか選んでもらい、それらが初期の宇宙について何を教えてくれるかを説明してもらった。

翻訳:三枝小夜子

Nature ダイジェスト Vol. 20 No. 10

DOI: 10.1038/ndigest.2023.231012

原文

These six distant galaxies captured by JWST are wowing astronomers
  • Nature (2023-06-30) | DOI: 10.1038/d41586-023-02157-9
  • Alexandra Witze