Nature Photonics 投稿セミナー in 東芝

論文投稿では何が重要か

2013年10月9日

Nature Photonics 投稿セミナー

「カバーレターって、どう書いたらいいのだろう?」、「内容は、採択基準の新規性に該当しているだろうか?」、「そもそもNature PhotonicsNature Physics、どちらに投稿しよう?」━━大切な研究を論文にまとめ、投稿する過程では、いろいろと疑問が湧いてくることだろう。そうした研究者の方々の悩みや心配に答えるべく、Nature Publishing Group(NPG)は、Nature Photonics 編集者の堀内典明による投稿セミナーを開催した。

堀内は、この雑誌の編集者4人のうちの1人。Nature およびNature 関連34誌の中で、唯一の日本人編集者だ。

今年で創刊6年目を迎えたNature Photonics の編集本部は、Nature 関連誌の中で唯一、日本に置かれている。それというのも、日本は、世界的に見てもフォトニクス産業の中心にあり、日本からの優秀な論文の投稿が期待されたからにほかならない。実際、Nature Photonics の最近1年間の国別の論文投稿数をみると、日本は、アメリカ、中国に次ぐ第3位。採択数は、アメリカに次ぐ第2位なのだ。この数字をみると立派な順位のようにも思えるが、「日本の研究者の実力を考えると、もっと多くてもいいはずです」と堀内。特に、「我々は、企業の研究者からの投稿を期待しています」とのこと。企業では、秘密保持の問題などもあるだろうが、特許取得後でも論文投稿は可能なのだという。

Nature やNature 関連誌は投稿しづらい論文雑誌、と思いこんでいる方が多いのでは」と、堀内は心配している。決してそのようなことはないと思われるが、ただし、投稿する上で押さえておくべきことがある。それは、Nature Photonics の定める論文採択基準の把握だ。逆にいえば、たとえ研究が優れていても、その採択基準を理解し、それを踏まえた形で投稿しないと、論文は採用されないのである。NPGが投稿セミナーを開催し、Nature Photonics の採択基準や投稿規定を解説する目的は、ここにある。

Nature Photonics 投稿セミナー

今回、東芝研究開発センターで開かれた投稿セミナーには、30名を超える研究者が参加し、用意された会場は満席となった。堀内氏はPowerPointを用いて、あくまで具体的な説明を行った。例えば、Nature Photonics の論文採択基準における「新規性」、「技術革新性」、「フォトニクス関連の研究者に訴求するgeneral interest」などについて。それらの重要性は、nature.comの「Peer-review policy」やnatureasia.comの「Nature Photonics の投稿案内」にも明記されている。しかし、それぞれの研究分野や技術において、それらが何を指すのかは明白ではない。そこで、堀内氏は具体的な論文の例を挙げながら解説したのである。参加者は、熱心に耳を傾け、メモをとっていた。

また堀内は、論文の査読工程についても説明した。論文は、採択されるまで、あるいは運悪くリジェクト(不採択)されるまで、どのような過程を経るのか。編集者や査読者は何をするのか。その上で、投稿に関する注意点についての詳細な解説があった。  そして、このセミナーでは、参加した研究者たちからも、多くの質問が発せられた。「カバーレターを書くときのポイントは何か?」「そこに企業秘密を書いて大丈夫なのか?」「論文の文字数制限はどの程度守るべきか?」「査読者のレビューポイントに対応するコツは?」「リジェクトになった場合のアピールとは何か?」。こうした質問の一つ一つに、堀内氏は丁寧に答えていた。

採択選考で重視される項目は、学術論文誌によってそれぞれ異なる。それを理解することで、どの論文誌に投稿するべきか、また研究成果のどの部分をどのようにアピールすれば採択の可能性が高まるのか、といった論文投稿の指針が得られることだろう。Nature やNature 関連誌への投稿を考える研究者の方々には、このような投稿セミナーをぜひ活用していただきたい。

(文・藤川良子)

Nature Photonics アソシエイトエディター

堀内 典明(ほりうち・のりあき)

1992年、早稲田大学大学院にて修士号を取得。同年、フランス政府給費生としてフランスに留学。パリ大6大学 鉱物結晶学研究所、フランステレコムと共同研究を行い、1999年にフランスのジョセフフリエー大学(グルノーブル大学)にて博士号を取得。1999~2001年に豊田工業大学で博士研究員、2002~2009年に理化学研究所で研究者として研究活動に従事。取り組んできた主な研究テーマに非線形光学、結晶成長、フォトニック結晶が挙げられる。2009年、Nature Publishing Groupに入社。Nature Photonics の編集者となり、現在に至る。

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