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遺伝子治療:成体マウスでのin vivoゲノム塩基編集による代謝性肝疾患の治療

Nature Medicine 24, 10 doi: 10.1038/s41591-018-0209-1

CRISPR–Casを用いるゲノム編集は、先天性肝細胞代謝異常のような遺伝的疾患を標的とする治療での使用に大きな期待がかけられている。しかし、成体組織中にあって疾患原因となっている変異をin vivoで正確に修正することは、非常な難問である。これには、Cas9が誘導した二本鎖DNA(dsDNA)切断の相同組換え機構による修復が必要だが、この機構は非分裂細胞では非常に効率が低い。本論文では、ヒトの常染色体劣性遺伝性肝疾患のフェニルケトン尿症(PKU)のモデルであるフェニルアラニンヒドロキシラーゼ(Pah)enu2成体マウスの疾患表現型を、最近開発されたCRISPR–Cas関連塩基エディターを用いて修正したことを報告する。このような系により、dsDNA切断部位の形成と相同組換え修復(HDR)には依存せずに、C・G塩基からT・A塩基への変換やその逆の変換が可能になっている。我々は、インテイン分割塩基エディターを作製し、検証した。これによって、融合タンパク質を2つのタンパク質部分に分割でき、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターの積み荷となるDNA量の制限が回避される。AAV塩基エディター系の静脈内注入により、120 μmol/l以下という生理的な血中フェニルアラニン(L-Phe)レベルを回復できるだけのPahenu2遺伝子修正率が得られた。mRNAでの修正率は最大63%であり、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ(PAH)の酵素活性の回復、ならびにPahenu2マウスの薄い毛色表現型の回復が観察された。我々の知見は、AAVによる塩基編集システムの送達を用いてin vivoで遺伝性疾患を標的とすることが実行可能であり、治療応用も期待できることを明らかにしている。

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